孫社長は2014年11月の決算発表から、ソフトバンクの経営を表す際にイソップ寓話の「金の卵を産むガチョウ」を使って説明してきた。この寓話は、毎日1つの金の卵を産むガチョウを手に入れた男が、1日1個では我慢できずにガチョウの腹を割いてみたが金の卵は入っておらず、ガチョウも失ってしまった、という話。欲に目がくらんで全てを失うことの愚かさと、資源を大事にすれば長期的に大きな利益を得ることができる、という教訓を物語っている。
孫社長はおそらくこの図を、投資について即座に結果(=利益)を求める声に対しての反論として使っているのだろう。思えば2014年当時も、インドへの投資を説明するにあたり、2030年代にはインド市場が米国市場を上回るという予想を見せ、かつて中国のアリババへの投資が約4,000倍にもなったことを挙げて、長期投資への理解を求めていた。
今回の決算説明会ではガチョウの図を示しただけでなく、ガチョウが産んでいる金の卵が、企業価値から純有利子負債を引いた株主価値であると示してみせた。借金(純有利子負債)は2兆円増えたが、これを餌にしてガチョウは去年より5兆円多い卵を産んでみせたではないか、ということだ。
ただし、ソフトバンクそのものがガチョウに餌を与えるのは終わりにして、もっと大規模な買収や投資も可能にしていくための仕組みとして準備したのが、今年設立されたソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)だ。これはサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドらと設立した10兆円規模のファンドであり、ARMやインドのECサイトであるスナップディール、インテルサット/ワンウェブといった衛星通信事業などを投資対象とするとされている。ソフトバンクは今後、買収や提携はNo.1同士が行い、No.1であるメリットを生かした戦略を立てていくと宣言しており、その原資としてSVFを積極的に活用していくと見られる。