――閣下は音に相当なこだわりをお持ちのようですが、聖飢魔IIや閣下のソロの楽曲を制作するとき、もっとも気をつけていることは?

デーモン閣下 いろいろあるな。音質というジャンルもあれば、そもそもどのような楽曲なのかということもあるし。曲の構成、歌詞の内容……、今日のテーマである「音質」ということで考えれば、曲のタイプを生かしきった音質にしたい、とういうことだな。

ソロだから歌をメインに聴かせる曲だろうと思われてしまうかもしれないが、場合によってそうではないときがあって。楽器の迫力を前面に出したいときもあるし、音は大きくなくてもいいからこの楽器をもう少しきわ立たせたい、というときもあるのだ。演出とでもいえばいいのか? その楽曲において一番聴かせたい部分はどこなのか、そのディレクションをする立場の自分が決断するわけだ。

――ハイレゾサウンドを体感してみて、正直な感想をお聞かせください。

デーモン閣下 率直にいうと、その音楽を聴くにあたって「もっとも自然な状態で聴こえる」ということだな。CDやMP3と比べると、これほどまでに違うのだな、と。GRANBEATを使い、同じ曲をハイレゾリューション対応のヘッドホンと非対応のヘッドホンで聴き比べて、今度はハイレゾリューション品質のマスター音源とそうではない同一曲を聴き比べたのだが、どれも違う。

スピーカーで音を聴く場合、左の耳にも右のスピーカーから出ている音は聴こえているし、逆の耳もそうだ。つまり、それを「普通の聴こえ方」として我々は音楽を作っている。だが、実は普通のヘッドホンはスピーカーと違って、音のセンター……、つまり反対側の音が反対の耳に届く音、これがきちんと出ないので、我々にはやや違和感がある。

だけれど、この「GRANBEAT」とそれに対応するヘッドホンの併用ではそこの違和感がほぼない。別な表現をすると「立体的に聴こえる」。モノラル時代からステレオ時代に移行したとき、音が立体的に聴こえると感心したが、それは左右に立体的と感じていただけなのだな。そう、ハイレゾリューション音源ではさらに「奥行き」も感じられるのだ。

バスドラムが典型的だな。レコーディングでもコンサートでもマイクを立てる (音を拾う) のは基本的に正面側の「フロントヘッド」と呼ばれる共鳴部分だ。だが実際の音はドラマーの足のビーターによる打面にて奏でられていて、厳密には「打った音と共鳴する音」の2つが存在するが、CDなどではそこまでは聴こえない。しかし、ハイレゾリューションだとそれがよく聴こえる。これが吾輩の言う奥行きの立体感だな、これは面白かった。奥行きを意識して聴き比べれば、皆も理解できると思うぞ。

――聖飢魔IIの大教典・小教典や閣下ソロ作品のなかで、ハイレゾサウンドで聴いてみたい曲のベスト3を教えてください。

デーモン閣下 ええええ~、それは難しい質問だな (しばし考える閣下) ……。ひとつは新アルバム「EXISTENCE」に収録されている「深山幻想記 -能Rock-」だな。今回のアルバムで落ち着きどころを見つけるまで、もっとも難しかった曲だ。大鼓、小鼓などの和楽器がどの場所で鳴っているのか、音質がよければ録音時の立ち位置がわかるはず。これも立体感だな。

次に聖飢魔IIの大教典「LIVING LEGEND」のラスト「GO AHEAD!」も聴いてみたい。もう1曲挙げるのなら、ソロのベスト盤「LE MONDE DE DEMON」に入っている「THE OUTER MISSION」だな。ライヴで聖飢魔IIの曲をカヴァー演奏しているものだ。

――4月21日、大阪を皮切りにソロツアー「DEMON'S ROCK "EXISTENCE" TOUR」が始まりますが、信者の方たちに向けて一言お願いします。

デーモン閣下 来ればわかる! 来ないヤツにはわからない!

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さて、オンキヨーとデーモン閣下の関係といえば、D.C.18 (2016) 年春に発売され即日完売となった聖飢魔II30周年記念限定ヘッドホン「SEIKIMA II」に始まり、カスタムイヤホン「Devil's Ear」、そして今回発表となったハイレゾ対応インナーイヤーヘッドホン「Legend」と、ある意味新譜と肩を並べるほどに熱いものとなっている。Legendには、今回の企画のために特別にリマスター制作された (一般に発布されたことのない) ハイレゾ版の2曲、「呪いのシャ・ナ・ナ・ナ」と「GOBLIN’S SCALE」のダウンロードコードが付属する。

聖飢魔IIとオンキヨーのコラボイヤホン「Legend」。E700Mをベースに開発されたものだ

(撮影 : 高嶋一成)