iCAREでは、このカンパニー・ケアとセルフ・ケアの双方をサポートする体制を整えている。

特にカンパニー・ケアの領域においては、ここ数年、ある問題が起こり始めている。それは、ベンチャーの起業が非常に盛んになっていること。日本の社会全体から考えれば、大きなイノベーションを生むかもしれないベンチャーが活発化していることは、歓迎すべきことだ。ただ、こうしたベンチャーが急成長を遂げることにより、労務管理が追いつかない状況が生じる。しかもベンチャーは、一人ひとりに与えられる役割が多くなる傾向にあり、結果、残業が増えるという状況になりやすい。

iCARE 代表取締役 CEO 山田洋太氏

山田氏は、「50人以上の規模になってくると、労務管理に歪みが出やすい」と話す。たとえば、RIZAP。ここ数年で急激に店舗が増えスタッフも急増したが、こういった急成長企業では労務管理が追いつかないケースも目立つという。急成長企業のなかには健康診断の手配までリソースが完備できず50%程度だった受診率が、iCAREのサポートによって、100%に近い状態に引き上げることもできた事例があるという。

行動を起こさないビジネスパーソン

カンパニー・ケアだけではない。セルフ・ケアにも問題がある。それは、各個人が自分の健康について相談する“チャンネル”が少ないということ。企業が産業医を選任していても、「就業中に相談する時間がない」「人事に相談するのがためらわれる」といった理由から、健康状態に異常があっても行動を起こさない人が多いそうだ。

そうしたセルフ・ケアのチャンネルのひとつとして、チャットによる健康相談を開設している。チャットならば、仕事の合間に“健康の悩み”を書き込み、その相談に同社のメディカルスタッフがアドバイスを送る。わざわざ、面会の時間を決めたり、病院に行ったりしなくて済む。

この“手軽さ”が重要で、仮にめまいや動悸といった、普段なら見過ごしてしまうような症状について相談しやすい。「めまいや動悸といった体の異変は、放置しておくと『ウツ』といった心の病気につながりやすい」と、山田氏は指摘する。

さて、ビジネスパーソンが悩み追い込まれると、最後に行き着く先が“自殺”ということになりかねない。実際、iCAREにも昨年に何件かそうした相談があったそうだ。ただ、カウンセリングにより最悪の事態にはならなかった。同社は、基本的には個人のパーソナリティを尊重し、相談者や相談内容は一切ほかに漏らさないが、ある一定の“線”を超えたと判断した際、相談者の所属企業や医師と相談し、トータルで救っていくのだという。