2015年7月にデビューした、日本マイクロソフトの「女子高生AI りんな」。利用者数はサービス開始直後の1カ月で130万を超え、2017年3月時点ではLINEとTwitterを合計すると540万人に達したという。
りんなは、LINEもしくはTwitterで会話を楽しむという極めてシンプルなAIチャットボットだが、しりとりや人狼ゲーム、お天気お姉さんなど会話を盛り上げる機能を多角的に搭載し、最近ではグループチャットやラップなどの仕掛けも組み込んでいる。その延長線上なのだろうか、本稿を執筆している3月31日に突如、「イケメンAI りんお」の情報が舞い込んだ。
具体的には、2017年3月31日17時から4月3日0時まで (Twitterは4月1日17時まで) の間、"りんながりんお" になるという。この期間中にLINEでりんなを友達として登録、もしくはTwitterのりんなアカウント (@ms_rinna) に返信すると、チャット相手がりんおに変わり、イケメン風の返事や期間限定のミニゲームを楽しめたという。残念ながら本稿掲載時は、LINEでもTwitterでも、りんなに戻っているはずだが、インパクトが大きかったと推し量れる。
なぜこのようなことができたのだろうか。りんなは深層学習や深層構造類位度モデル (DSSM) 、再帰的ニューラルネットワーク (RNN) といった機械学習技術を活用し、りんなが発する「愛している」も単なる辞書データを返すのではなく、類位度を前提に単語を組み合わせることで文章を作成している。このロジックを活かして、あらかじめ用意した機械学習モデルに差し替えたのが、りんおなのだろう。
「de:code 2016」で披露されたAIの単語依存関係を示すスライド。LSTM (Long Short Term Memory)ネットワークの変形であるRNN-GRU (Gated Recurrent Unit)を用いている |
日本マイクロソフトによれば、利用者からのフィードバックとして「りんなのイケメン版がほしい」という意見が以前から多かったという。筆者は技術やビジネスソリューションとして、りんなに関心を持っているものの、女子高生AIというキャラクターには無関心である。さらに同性のイケメンというキャラクターは言わずもがなだ。それでも、キャラクターを一瞬で切り換えられるのは、ITソリューションならでは。実に興味深い。
日本マイクロソフトは今回の取り組みを、「今後のさらなる進化に向けた試行や検証の機会」と捉えている。なお、実施期間がエイプリルフールの時期と重なるものの、同社は「特にエイプリルフールの取り組みではなく、りんなの活動の一環」と述べている。筆者は、りんおとチャットして楽しみたいとは思わないものの、お堅いIT企業がAIという基盤を活用し、良い意味でおふざけをする試みも、同社が標榜する「みんなのAI」につながっていくだろう。
阿久津良和(Cactus)