説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『iOS 10.3にアップデートすると空き容量が増えるってホント?』という質問に答えます。

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はい、変化する容量は機種や利用状況によってまちまちですが、iOS 10.3にアップデートすると内蔵ストレージの空き容量が増えることがあります。実際、iPhone 7(32Gモデル)をiOS 10.3にアップデートすると、直前の空き容量が4.55ギガバイト(アップデータ含まず)だったところが、5.94ギガバイトと約1.4ギガバイトも増えました。

空き容量が増えた原因は、ファイルシステムの変更によるものと考えられます。iOS 10.3では、それ以前のHFS Plus(HFS+)に代わりAPFS(Apple File System)が採用されました。それまでHFS Plusでフォーマットされていた内蔵ストレージが、APFSに変更されるのです。連続する空データがある場合に物理的なディスク消費を省く「Sparseファイル(疎ファイル)」が用意されるなど、ストレージを効率的に使うよう設計されているため、空き容量が増加すると考えられます。

アップデート処理中は、Appleマークの下に進捗状況を射示すプログレスバーが表示されますが、通常のアップデートに比べ時間がかかるように感じられるのは、その変換処理のためでしょう。なお、APFSはデータ構造の遅延初期化に対応するため、事前にストレージ全体をフォーマットする必要はありません。

変化は空き容量の増加だけではありません。APFSは64ビット/マルチスレッド対応のファイルシステムであり、32ビット/シングルスレッドのHFS Plusより高いパフォーマンスを発揮すると考えられます。多少ながら読み書き速度が改善されたため、システムやアプリを起動するときにキビキビと感じられるかもしれません。具体的なメリットは現時点では不明なものの、ファイル単位での暗号化に対応するなど安全性も向上しています。

iOS 10.3アップデート適用前(左)と適用後(右)を比較すると、ディスク空き容量が増加することがわかります