日本政府観光局(JNTO)は、2016年の訪日外国人観光客、いわゆる「インバウンド観光客」が約2,400万人に達したと年初に発表した。訪日外国人観光客による経済効果も大きく、3兆7,000億円を超え、過去最高の水準に達している。

この観光産業においての“好景気”に乗り遅れまいと、各自治体はアイデアを絞り、いかに観光客を呼び込むかに尽力している。

そうしたなかにあって、少し変わったPRをしている都市がある。島根県の県庁所在地、松江市だ。

同市が打ち出したPR素材は「怪談」だ。

小泉八雲旧居(2015年撮影)

なぜ怪談をPR素材に選んだのか。それは、日本の怪談に魅せられたギリシャ系アイルランド人、パトリック・ラフカディオ・ハーン氏が松江市に短期間だが住居をかまえていたからだ。洋名では誰のことかわからないかもしれないが、日本での帰化名を「小泉八雲」という。

彼は「ろくろ首」や「雪女」、「耳なし芳一」といった怪談を再話した。そんな人物が住んでいた地であるからこそ、怪談を市のPR素材として用いることになった。

そんな松江市が以前から松江観光大使として迎えているのが、DLE(ディー・エル・イー)のFROGMAN氏と、小説家でもあり怪異蒐集家でもある木原浩勝氏、そして声優の茶風林氏らだ。彼らは「怪談のふるさと松江」キャンペーンに協力し、「平成松江怪談~怪し(あやかし)~」というアニメを制作した。これを松江市の観光キャンペーンに生かしていくと、メディア向けPRイベントで明かした。なお、島根県を愛するという設定の「鷹の爪団」の吉田くんもイベントに現れた。

FROGMAN氏(写真左)。左から茶風林氏と木原浩勝氏(写真中)。鷹の爪団の吉田くん(写真右)

また、夜間に怪談にゆかりのある地をめぐる「松江ゴーストツアー」を開催し、観光客の取り込みをねらうという。日没時刻の10分前に出発し、「ギリギリ井戸」「月照寺」など、松江市の怪談スポットをまわる。

化粧品メーカーの協力も

ポーラの管千帆子氏

さらに心強い“援軍”も現れた。それは化粧品大手のポーラだ。同社は「ニッポン美肌県グランプリ」を選出しているが、島根県は2015年まで4年連続で1位の栄誉に輝いている。2016年には惜しくも2位となったが、“美肌”の方々が多いという点で、ポーラはグランプリを開催する以前から同県に着目していた。

ポーラの管千帆子氏によれば、日照時間が短いのと空気に含まれる水分が多いこと、肌を荒らす風が吹きにくいという特徴が美肌の方々が多い理由とした。また、“美肌の湯”と呼ばれる玉造温泉の存在、宍道湖のシジミや出雲そばに代表される食生活、さらに“抹茶”を普通に生活にとり入れていることを挙げた。