そんなフォスター氏がVRの展望について懸念している材料となっているのがAppleの動きだという。現状の特別な用途、特殊な場面に限定されるVR活用が拡がっていくためには、「VRが普及するデバイス」が必要となるからだ。

その「VRが普及するデバイス」について、米国などの先進国でスマートフォンのシェアが4割を超えるAppleに対して期待が高い反面、現状の動きの鈍さが心配事になっているのだ。

Appleは、VRに関する企業買収や、デバイス、コンテンツ表示、インターフェイス等の特許出願を続けている。また、Appleのスマートグラスに関する噂も流れた。

しかし、既にVRデバイスをリリースしているプラットフォーマー、MicrosoftやFacebook、Google、ソニーのように、VRに関する取り組みを積極的には見せていない。現段階で、その取り組みが表に出てくることはない、という意味だ。

Facebookは前述の通り、Oculusを買収しており、またニュースフィードに対して360度写真を投稿し、スマホだけでも見られるように実装している。またGoogleは、2016年5月のGoogle I/OでVR環境のDaydreamを整備し、VRを快適に利用できるスペックの策定や、独自のヘッドセットデバイス「Daydream View」をリリース。またゲーム業界ではソニーがPlaystation VRをリリースした。

Googleのヘッドセットデバイス「Daydream View」

しかし、こうしたテクノロジー企業の動きが、VRを活用したアプリや、VRコンテンツを視聴する環境を、メインストリームに押し上げる原動力にはなり得ない。そんな冷静な分析が、「AppleのVRに対する注目度の低さ」を懸念へと変えている。