説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『今度のアップデート「iOS 10.3」は慎重に、ってどういうこと?』という質問に答えます。
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今度のソフトウェアアップデート「iOS 10.3」は、「iOS 9」や「iOS 10」のようにメジャー番号が変わるアップデートではありませんが、システムソフトウェアとしては大きな変更があります。それは「ファイルシステムの変更」です。
iOS 10.3には、新たに開発されたファイルシステム「Apple File System(APFS)」が採用されています。iPhoneの内蔵ストレージは一定のルール(フォーマット形式)で初期化され読み書きに備えますが、従来は「HFS Plus(HFS+)」だったところがiOS 10.3ではAPFSに変更されます。つまり、iOS 10.3にアップデートすることにより、OSの土台部分といえるファイルシステムが変わるのです。
APFSはHFS+の次世代版に位置付けられ、HFS+の機能にくわえさまざまな新機能が用意されています。具体的には、3種類の暗号化処理(なし/単一キー/マルチキー)の追加、連続する空データがある場合に物理的なディスク消費を省く「Sparseファイル(疎ファイル)」のサポート、特定時点におけるシステムの自動バックアップ機能(スナップショット)などが用意されています。なにやら難しい話ですが、64ビットOSにふさわしい効率的で安全性の高いファイルシステムになった、と理解しておけばいいでしょう。
アップデート作業は従来と大きく変わりません。一般的にファイルシステムを変更する場合、対象のストレージ全体を一括して初期化する必要があるため、アップデートは大がかりなものになりますが、データ構造の遅延初期化が可能なAPFSではその必要がありません。アップデートとともに、ファイルシステムはHFS+からAPFSへと自動変換されるしくみです。
とはいえ、ファイルシステムの変更が重大事項なことに変わりはなく、ふだん以上にアップデートを慎重に進めるべきです。必ず事前にバックアップを作成したうえで、アップデートに臨みましょう。