新製品はBICの英国チームが開発を主導し、その中心的な役割を担ったのがコニカミノルタ ビジネスイノベーションおよびR&D担当バイスプレジデント兼ディレクターのデニス・カリー氏だ。同氏は過去にNATOのCTOとして、通信・情報システム部門に12年間務めるなど経歴も興味深い。

コニカミノルタ ビジネスイノベーションおよびR&D担当バイスプレジデント兼ディレクターのデニス・カリー氏

同氏は新製品の特徴として「クラウドプラットフォームであり、4つのコアコンポーネントを備えています。外部に発注するITサービスの範囲(外注なし、一部外注、完全外注)を決められ、システムセキュリティとデータプロテクションが組み込まれ、データの蓄積とバックアップマネージメント、産業ごとのプロダクトを有します。また、自社のITの全体像を1つの画面で見える化するダッシュボードのほか、社員・顧客・パートナーが場所・端末・接続方法に関係なく、協力することを可能とし、チームの生産性と交流の拡大が図れ、Officeアプリやファイルシェアリングに加え、WatsonなどのAIやIoTツールをサポートしています。さらに、ユーザーは、オンラインストア『Konica Minolta Marketplace』でアプリケーションやITサービスの購入が可能で、IT関連コストの最適化を支援します。このような機能を持つ新製品は仕事を効率的に行うために、ITを活用した情報のハブとなります」と、説く。

スタンドアローン型 Workplace Edge

ラック型 Workplace Edge

Workplace Hub

今後の製品展開に関しては、次のバージョンで多様な業種における将来の職場環境で必要となると想定されるサービスやソリューションの包括的なプラットフォームに進化させ、IoT、AI、エッジコンピューティング、ディープラーニングなどの技術を導入し、デジタル化する企業の中心的な存在になることを目指す。

さらに、AIを人間に置換するものとしてではなく、人間が価値ある仕事に集中できるような情報を瞬時に提供することで人間をサポートするとともに、AIの活用で企業における集合知に加え、外部データを取り込むことで個人、チーム、企業全体が効果的に働ける環境を提供していくという。

まずは、2018年に医師や患者のデジタルヘルスケアのニーズに合わせた病院向けWorkplace Hubのリリースを予定しており、そのほかの分野においても開発を継続的に進めていく考えを明かした。なお、会場内にはブースが設けられ、グループウェアやサイバーセキュリティ、ヘルスケア、製造業などのデモを行っていた。

未来の働き方とは?

同イベントの基調講演には、世界的なベストセラー「ジェネレーション X - 加速された文化のための物語たち」など1991年以来、13の小説を執筆しているダグラス・クープランド氏が登壇した。

ダグラス・クープランド氏

同氏は「明日の世界を理解するためには、今日何が起きているのかを理解する必要があり、未来は今日ここで始まっていると考えてもいいでしょう。3年前に大きな文化的な変化がありました。それは、インターネットやスマートフォンの登場により、未来が近くなり、現在と未来が融合しているということです」と指摘。

そのような状況下において、20年前に脳がどのような知覚を持っていたかについて同氏は「スマートフォンのスクリーンを見ている時代ではありませんでした。20世紀の脳は21世紀の世界では役に立たないと感じますし、新しいテクノロジーの誕生により古い脳は適さなくなっています」と述べた。

同氏はIoTの時代を迎え、人類は将来に対応し得る知性になっているのか、以前より人類は賢くなっているのか、と考えるときがあるという。その点に関して「知覚的には賢くなっていると思いますが、数字の羅列や道などを記憶する必要がなくなりつつあります。会話もSNSなどチャットが登場しており、大きな神経学的な変化が起こっています。時間の過ごし方が変わり、クラウドが可能にしているものも多く存在します。すでに、AIはわれわれの日常や仕事の一部になり、脳の使い方が変化し、データにより、われわれの経験も変わってきています」と話した。

また、近年のデジタル化が急速に進んでいる状況を鑑み「この先、非常に大きな出来事がなければ人類はどうなるでしょうか?現在は自動車や原子力、インターネット、Google、iPhoneが存在しており、すでに発明しつくされています。しかし、100年後に現在と同じ世界のままとはいきません。人類は急速に新しいものに適応し、そしてすぐに飽きて新しいものを発明するため、将来的にどうなるのかを考える必要があります。現在は9~17時の雇用形態ですが、デジタル化が進めば進むほど、仕事以外に多くのことに時間を費やすことができる状況になります。未来の労働者はWiFi、情報、豊かな環境で働き続けることに関しては、やぶさかではないと言えます」と未来の働き方について言及した。

確かに、クープランド氏が言うように世界的な「デジタル化」の中において、従業員の働き方の多様性を担保すれば企業の業務改善につながることもあり得る。昨今、日本では官民一体で働き方改革を推し進めているが、コニカミノルタが発表したWorkplace Hubが企業・働く人に対して、どこまで貢献・支援できるのかは未知数だ。しかし、同社が掲げている「個別のニーズに合わせてデジタル化に伴う問題を解決し、効果的な意思決定ができるような価値を提供する」、これを実現する可能性に期待したい。