1月にラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー「CES 2017」では、ソニーパナソニックLGエレクトロニクスが有機ELテレビを発表し、おおいに注目を集めた。有機ELはスマホやスマートウォッチの画面、デジタルカメラの電子ビューファインダーなどに以前から使われているディスプレイデバイスだが、4Kの大画面テレビに搭載されると視聴体験はどう変わるのか? また、液晶テレビと比べてどんなメリット・デメリットがあるのか? という点に、多くの方々が関心を寄せていると思う。

今回、3月に国内のテレビメーカーとして最初に有機ELテレビを発売する東芝「REGZA」の開発チームを訪ね、有機ELテレビに関する素朴な疑問をぶつけてみた。インタビューに答えてくれたのは、REGZAシリーズの商品企画を担当する石橋諭氏、TV映像マイスタの住吉肇氏、HD映像音声マイスタの桑原光孝氏、広報の山口孝一氏だ。東芝はこの春にREGZAの"2つのフラッグシップ"として、有機ELの「X910シリーズ」と液晶の「Z810Xシリーズ」を発売するが、それぞれの関係性についてもうかがってみた。

左から、HD映像音声マイスタの桑原光孝氏、TV映像マイスタの住吉肇氏、商品企画部の石橋諭氏、経営企画部の山口孝一氏

有機ELと液晶、それぞれのディスプレイ技術にはどのような得手・不得手があるのだろうか。石橋氏は次のように説明する。

「有機ELは画素自体が発光する"自発光型"のディスプレイなので、光を完全にオフにすることで深い黒が再現できます。明暗のコントラスト表現力に長けているところが大きな特長です。また画面の視野角が広く、動画応答性にも優れています。かたや、液晶ディスプレイはLEDの配列やバックライトの選択によって、有機ELよりも明るく力強い映像を表現できる点がメリットになります。また、液晶の場合は10bit表示のパネルとバックライトの明滅を高精度にコントロールすることで、よりきめ細かな階調表現が可能と言われています」(石橋氏)

左が有機ELテレビの「X910」、右が液晶テレビの「Z810X」。いずれもフラッグシップとして位置づけられている

各々のディスプレイに本来の強みがあり、これを存分に引き出す映像処理エンジンの実力が最終的な「テレビとしての出来映え」を左右すると石橋氏は強調する。有機ELのX910シリーズ、液晶のZ810Xシリーズには、それぞれ長年培った高画質化技術を詰め込んだ最新世代の映像処理エンジンが組み込まれている。東芝では「X910もZ810XもREGZAのフラッグシップ」と位置付けており、各ディスプレイの特徴をフルに引き出した映像を見比べてほしいと石橋氏はアピールする。

商品企画部の石橋諭氏