さて、この隅田川の熱供給プラントが、数十年ぶりに再注目されている。

その第一の理由が、今年初頭に発表された経済産業省の「省エネ大賞」において、省エネ事例部門の経済産業大臣賞を受賞したことだろう。

導入から30年近くも経ったこの熱供給プラントに、今さら省エネ大賞が贈られるのもどうかと思われるかもしれない。だが、このプラントは2012年に大幅リニューアルをし、約30%の効率向上を果たした。もちろんリニューアル前も改良を続け、あの巨大なビルの熱供給を支えてきた。

左はプラントの心臓ともいえるヒートポンプ。右は頭脳ともいえる中央監視室

いや、三井倉庫箱崎ビルだけではない。実はこの熱供給プラントは、箱崎地区にある数棟のビルにも熱供給を行っている。たとえばリバーサイド読売や住友不動産箱崎ビルなどだ。つまり、地区そのものを支える熱供給源なのだ。

再生可能エネルギーへの意識の高まり

そして、このプラントが再注目されているもうひとつの理由。それが、再生可能エネルギーに対する社会の意識の向上だ。

再生可能エネルギーに関しては、それこそ三井倉庫箱崎ビルが建設された頃から一部で注目されてきた。隅田川の利水による熱供給プラントがこのビルに導入されたのも、そうした事例のひとつといえるだろう。だが、当時はバブル。再生可能エネルギーが環境保全に有用だとわかっていても、より多くの、より強力なエネルギーが求められる傾向にあった。 だが、そのバブルははじけ、2000年台に入るといわゆる“ECO”というキーワードが注目されるようになる。たとえばハイブリッド車の急速な浸透だ。1997年に正式発売されたハイブリッド車は、いまや主要自動車メーカーの主力となっている。個人個人のECOに対する意識の高まりの表れといってよい。

直近ではFIT法が開始されたのが記憶に新しい。これは再生可能エネルギーによる発電を促す仕組みだが、残念ながら電力買い取り価格を当て込んだ業者により、少々問題も起こった。だが、制度的にはまだまだ発展途上といえるが、再生可能エネルギーに対する意識が電力業界では高いことを表している。