動画マーケティングの今後を考える上でもうひとつ重要なテーマが、配信環境についてだ。多くの企業は、動画コンテンツの提供環境としてYouTubeを活用しているのではないだろうか。YouTubeに公式チャンネルを立ち上げて動画コンテンツを展開するのはもちろんのこと、オウンドメディアにYouTubeの動画をエンベット(貼り付け)してサイト来訪者に提供している場合も多く見られる。

しかし、北庄司氏は「YouTubeの活用は多くの視聴者にリーチする手段としては非常に有効だ」と前置きした上で、YouTubeに依存しすぎてしまう動画マーケティングに警鐘を鳴らしている。「オウンドメディアにYouTube動画をエンベットしている場合、集客した見込み顧客をYouTubeに流出させてしまう可能性がある」(北庄司氏)。

YouTubeのプレイヤーは4K解像度の動画も再生できる非常に優秀なツールだが、一方で関連動画が表示されたり、「YouTubeサイトで視聴する」ボタンが設置されていたり、企業にとってはオウンドメディアからの見込み顧客の流出を招きかねないファンクションを登載している。そうした機能によって動画プレイヤーからYouTubeサイトに見込み顧客が遷移してしまえば、見込み顧客の関心が違う動画に移ってしまうことで自社への関心を失ってしまうのだ。「ブライトコーブのリサーチでは、YouTubeサイトに流出したユーザーが自社サイトに戻ってくる割合は1%を切っている」(北庄司氏)

加えて、「YouTubeはBtoB領域の動画マーケティングには不向きな一面がある」と北庄司氏は付け加える。というのも、企業のインターネット環境によってはYouTubeの視聴を技術的に制限している場合が20%ほどあり(日本アドバタイザーズ協会調べ)、公開した動画がターゲットとしている企業担当者に届かない可能性があるというのだ。こうしたYouTubeのメリットや内在しているデメリットを十分に理解して活用する必要があると言えるだろう

企業のオフィスでは依然として「YouTube視聴不可」の場合が多い