ネットワーク面での優遇はどこまで許される?

企業体力があり、大手キャリアの一角を占めるKDDIがテコ入れを図ったことで、UQ mobileは端末調達やプロモーション、販売面などで優位になったことから、他のMVNOが脅威を抱くのは確かだ。しかしながらMVNOにとって、そうした部分より一層UQ mobileを警戒しているのは、同じMVNOという立場でありながら、ネットワーク面でKDDIがUQ mobileを優遇している部分があることだ。

そのことを象徴しているのが「おしゃべりプラン」である。UQ mobileは2月22日より、5分間の通話定額が可能な「おしゃべりプラン」を提供するとしているが、このプランは通常の音声通話の仕組みを用いて5分間の通話定額を実現している。

UQ mobileが2月22日より提供開始予定の「おしゃべりプラン」は、IP電話などを用いることなく5分間通話定額を実現。それゆえVoLTEでの高音質通話が可能だ

実は日本のMVNOは、契約上音声通話に関して自由なサービス設計をするのが難しい。それゆえIP電話やプレフィックスコールなど、特殊な仕組みを用いることで通話定額を実現していることから、定額通話を利用するとVoLTEによる高音質での通話ができないという弱点がある。だがUQ mobileはKDDIの協力もあってか、そうした特殊な仕組みを使うことなく通話定額を実現しており、VoLTEの高音質通話で定額通話ができる。

また、auのネットワークを用いたMVNOのSIM(mineoの「Aプラン」やIIJmioモバイルの「タイプA」など)では通常、iPhone 6s/6s Plus以降のSIMフリー版iOS端末で利用すると、テザリングが利用できないという問題を抱えている。だがUQ mobileのSIMは、同じauのネットワークを用いてるにもかかわらず、これらの端末でのテザリングが可能だという。こうした点も、UQ mobileとそれ以外のMVNOとで、KDDI側の対応に差が見られるポイントといえるだろう。

1月29日の「IIJmio meeting 14」より。auのネットワークを用いたMVNOのSIMでは通常、テザリングを許可するサーバーにアクセスできず、iPhone 6s以降のiOS端末でテザリングが利用できないという

UQ mobileは低価格サービスで先行するワイモバイルに追いつくことを明確な目標としており、打ち出す施策もワイモバイルの施策を後追いするものが多い。それゆえKDDIも、ライバルキャリアのサブブランドであるワイモバイルに劣らない環境を作り上げるべく、UQ mobileに対しネットワーク面でも改良を図っていると考えられる。だがそうした改良策が、他のMVNOに向けては反映されていないことから、対MVNOという視点で見た場合、UQ mobileへの優遇になってしまっていると考えられそうだ。

だがUQ mobileはサブブランドに限りなく近い存在でありながらも、ワイモバイルとは異なり別会社で運営されているMVNOであることに変わりはない。それゆえUQ mobile、ひいてはKDDI傘下のMVNOの優遇を続けていると、キャリアと特定のMVNOが密接につながることを快く思わない総務省が、何らかの措置を打ち出してくる可能性が十分考えられる。少なくともネットワークに関しては、他社系列のMVNOに対しても公平な環境を提供することが求められるところだ。