東芝は、2017年1月27日、同社本社において、半導体メモリ事業の分社化および原子力事業の見直しについて緊急会見を行った。
会見では、東芝の綱川智社長は、「今回、一度後戻りしたが、私は、東芝の再生を果たせると考えている。財務基盤を強化することから始めなくてはいけない」、「半導体メモリは、分社化しても注力事業であることに変わりはない」などと語るものの、「お宝」とも称された成長事業である半導体事業の分社化、そして、原子力事業を最注力事業から外すという決断は、同社の再生戦略の大きな転換を意味するものになる。
不適切会計処理問題から始まった同社の屋台骨を揺らす激震はいまだに続いている。
2016年春の東芝メディカルシステムズの売却により、一度は債務超過を回避したものの、原子力事業に関する減損損失の発生により、再び、債務超過の可能性が生まれているからだ。不適切会計処理を発端にした東芝が創業以来迎えている最大の危機は、いつまで続くのだろうか。
半導体メモリ事業を分社化の方針
東芝によると、社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社の半導体メモリ事業(SSD事業を含み、イメージセンサ事業を除く)を、会社分割によって、2017年3月31日付けで分社化。20%未満の外部資本を導入することになる。
綱川社長は、「メモリ事業は、大規模な設備投資を適時に行うことが必要であり、迅速な経営判断が行える体制を整備することが必要。今回の決定は、資金調達手段の拡充を図り、事業の成長、企業価値の最大化を図るものであり、取締役会では満場一致で決定した」と説明した。
分社化後は、ストレージ&デバイスソリューション社の傘下に置くことを明らかにする一方で、ディスクリートやシステムLSI、ハードディスク事業は分社化の対象から外し、東芝本体で維持する。一方で、三重県四日市の四日市工場の新製造棟は、予定通りに2月に着工する考えを強調した。
「平面NANDでは、年間2000億円規模の投資が必要だったが、3D NANDでは年間3000億円の投資が必要になる。そこに向けた投資が可能になる」と、会見に同席した成毛康雄副社長は語り、「20%未満という外部資本の出資比率は、東芝のなかでNAND事業が大事な事業であるという位置づけを継続したいという意味を持つ」と説明した。
こうしたメモリ事業の成長維持の手立てとして、今回の分社化を決断したと説明するが、外部資本を入れる事態にまで陥ったのは、メモリ事業そのものに課題があったわけではない。
本質的な問題は、東芝が、早急に資本増強をしなくてはならない立場に追い込まれている点にある。
綱川社長は、「今回の分社化は、メモリ事業の強化とともに、東芝の資本増強を実現することが、もうひとつの狙いである」と説明する。