この5つの原則は以下の通りだ。

真実性の確保

(1)訂正削除の履歴を起こすこと 訂正削除ができないこと、もしくはできるのであれば訂正削除の履歴を残すことがシステムの大前提となる。

(2)見読可能性 帳簿の形式に限定はされないが、保存データが整然とした形式及び明瞭な状態で見ることができるか。

(3)関係書類などの備え付け データの作成に当たり社内で決められた適切な規定に基づいて入力・保存ができているか。

(4)相互関連性 他の国税関係帳簿・国税関係書類と相互に関連する項目を持ち、互いに確認できることが必要。

(5)検索機能 保存したデータは、求められた記録を速やかに検索することができるか。原則として、検索範囲は過去7年間の事業年度ごとに1年間串刺しで検索できなければいけない。また、期間や金額の範囲など2つ以上の項目を組み合わせて指定をできることも要件に含まれる。

電子帳簿保存法 国税関係書類のスキャナ保存要件 資料:日立ソリューションズ

さらに、電子帳票システムをベースとしたソリューションで電子帳簿保存法に対応する場合、上記のうち(4)と(5)の要件が大きなポイントになるという。なぜなら、同法に基づいて紙書類をスキャン保存して運用するには、書類を探し出すための検索キーワードの付与が必要だからだ。

つまり、ただスキャンして保存するだけでは法的要件を満たせず、検索が可能となっていなければいけないのである。例えば、スキャン文書をPDF形式とした場合にも、検索ができるようにする必要がある。しかし、書類が1000枚、2000枚となってしまうと、検索キーワードの入力作業にかかる手間やコストはかなりのものとなってしまうことだろう。

こうした課題を解決するようなソリューションとして、日立ソリューションズは電子帳票システム「活文 Report Manager」を提供している。同製品の特徴の1つが、スキャンした文書を登録する際に、人工知能(AI)が属性情報(検索キーワード)を自動抽出することで、登録作業を大幅に効率化できる点だという。

このAIは、スキャンした紙帳票のフォーマットやデータの記載位置を学習し、必要なデータを自動抽出する。機械学習型のAIを採用しているため、もし抽出内容が誤っていた場合、訂正することで抽出ロジックを学習し、次回以降に反映されるようになる。

日立ソリューションズ ビジネスコラボレーション本部 レポートソリューション部 主任技師、成田丈夫氏

同製品の開発を担当した、日立ソリューションズ ビジネスコラボレーション本部 レポートソリューション部 主任技師、成田丈夫氏はこう説明する。

「手間がかかるスキャナ保存のための作業負担を抑えるとともに、スキャンしたデータを資産として活用できるようなソリューションを目指しました。また、活文では、帳簿データとスキャン文書を一元管理できるため、導入と運用に必要なコストも削減できるほか、既存の仕事の手順をできるだけ変えずにスキャナ保存に踏み出せるようになっています」

これまでに挙げたようなメリットから、現在、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を適用していない企業も、早めの実施が望まれると言ってよい。

さらに、三枝剛氏はこうアドバイスする。「書類に関しては、どの書類から電子保存をするのか順次、国税庁に申請することができます。申請時期も3カ月前であればいつでも大丈夫です。そのため、『旅費清算業務の範囲』など、対象を絞って申請を行い、段階的に電子化を進めていくのがよいのではないでしょうか」

見積書や請求書などの勘定系帳票をはじめとする主な国税関係書類の法定保存期間は7年。棚に書類が山積みされ、オフィスの執務スペースを圧迫している企業も多いことだろう。しかし、電子帳簿保存法の規制緩和をきっかけに、これらの書類のペーパーレス化が急速に進むことが期待できる。