富士通および富士通クライアントコンピューティングは17日、同社製PCの2017年春モデルを発表した。あわせて、富士通本社のある東京・汐留で発表会を実施。富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏が、新製品の特徴や背景、PC・タブレット事業の取り組みなどを紹介した。

富士通PC 2017年春モデル発表会

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新会社設立から1年、引き続き法人市場に注力

富士通のPC事業が独立し、2016年2月に富士通クライアントコンピューティングが設立されてから約1年が経つ。その間、同社は「あらゆる人、場所で必要となるコンピューティングをまかない、困り事を解決する」ことを理念に掲げてきた。

例えば、「納入後の設定や配布時間を短縮したい」といった要望に対し、ラベルやスクリーンプロテクタ貼付、集合梱包などを製造ライン上で行い、顧客側での設定作業やキッティング作業を不要とするカスタマイズを提供している。同社では国内に自社工場(島根富士通、富士通アイソテック)があり、こうしたカスタマイズの提供や、顧客の希望に沿った業務用端末が開発できる工場を持っていることが「自社の強みのひとつ」であると強調する。

同社は、法人向け製品をワールドワイドで、個人向け製品を国内のみで展開している。当然、法人向けの方が販売台数も大きく、自ずと主軸は法人向けになってくる。齋藤氏は、「モバイルプラットフォームの進化はまだ続くと思っている」と述べ、業種ごとにモバイル機器とそのソリューションが連携し、またIoT技術が拡大することで、まだ伸びる余地があるとした。

富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏

同社が掲げる理念

同社が考えるモバイルプラットフォームの進化

世界最軽量777gの13.3型モバイルPCがラインナップ

そうした考えを背景に、今回開発した富士通の2017年春モデルでは、業務PCを持ち出して使うなどのワークスタイルの変化と、その変化に応じて必要なセキュリティが高度になっていくといった課題に対応する狙いで、モバイル端末のラインナップが強化された。

法人向けでは6.0型というスマートフォンサイズの小型端末にフルWindowsを組み込んだ「ARROWS Tab V567/P」や、静脈認証を搭載した「ARROWS Tab Q737/P-PV」、13.3型の軽量モバイルPC「LIFEBOOK U937/P」といった12シリーズ18機種を用意。

一方、個人向けでは6シリーズ12機種が登場した。なかでも注目したい製品のひとつが、13.3型で世界最軽量をうたうモバイルPC「LIFEBOOK UH75/B1」。軽量化を突き詰め、液晶ディスプレイ部材のスリム化や、バッテリ搭載スペースの構造最適化などで、重量を777gまで落とし込んだ。バッテリ駆動時間は約8.3時間(JEITA 2.0)。

LIFEBOOK UH75/B1。写真は4層塗装を施した鮮やかな赤色が特徴のサテンレッド

ちなみに「LIFEBOOK UH75/B1」の法人モデルが「LIFEBOOK U937/P」なのだが、前者が重量約777gであるのに対し、後者は約797gと20g重い。これは、法人向けでは静脈認証や、LTEモジュール(3キャリア選択可能)などを組み込めるよう、個人向けモデルとは内部構造が若干異なるためだ。

薄型軽量のわりには頑丈であると、実際に女性がUH75/B1に乗って堅牢性をアピール。乗った後に開いても問題なく動いていた

LIFEBOOK UHシリーズは、個人向け上位モデルとして、重量約913gのUH90/B1も用意。UH90/B1のバッテリ駆動時間は、UH75/B1の約8.3時間から2倍以上の約17時間となる

200kgfの全面加圧試験や、約76㎝高からの底面落下試験などの頑丈評価試験をクリア

また、付加価値のひとつとして"ヒトとのつながり"を挙げ、個人向けモデルとしてリビング向けの一体型PC「ESPRIMO FH」シリーズの新製品を投入。「77/B1」「FH53/B1」「FH52/B1」の3機種は、23.8型ディスプレイが強調された約2mmの狭額ベゼルで、奥行きが16.8㎝と省スペースな新デザインを採用している。

「ESPRIMO FH」シリーズ新製品。"リビング向け"をコンセプトに、省スペースかつ、リビングに馴染むデザインを狙い、ディスプレイ四辺の狭額縁(狭ベゼル)が採用された。齋藤氏は「狭額×驚愕」とアピール

ベゼルの幅は約2mm

本体の内部構造

齋藤氏は「これからも我々にしかできない技術で、より顧客の役に立ちたい。将来についても、期待していただけると幸いだ」と締めくくった。

レノボとは「強くするための提携を狙っている」

質疑応答では、2016年10月に発表されたレノボグループとの提携に話が及んだ。

レノボとの提携で期待している部分について、齋藤氏は「詳しいことは話せない」と前置きしながらも、「大きく2つある」とコメント。「1つは法人・個人ユーザーに対し、企業方針や製品ラインナップなど、富士通としてユニークなものを提供していくことは変わらない。もう1つは、強くするための提携を狙っている。強化できることがあれば、今までの延長線でないこともやる」と回答した。

また、同社が持つ島根富士通、富士通アイソテックといった自社工場の保持については、「(自社工場を持っていることが)ひとつの強みだと考えている」。「カスタマイズというキーワードを出させていただいたが、ツールとしての工場は不可欠。企業による個別カスタマイズが(顧客に)受け入れられる限りは、これがなくなると我々の強みがなくなると考えている」と述べた。