良かったことも悪かったことも、さまざまな話題を残して、2016年の宇宙開発が終わりを迎えた。

ロシアには新しい宇宙基地が完成し、中国からは新型ロケットが相次いで打ち上げられ、大西宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに滞在するなどの明るい話題があった一方で、X線天文衛星「ひとみ」や火星着陸機「スキアパレッリ」の失敗、ファルコン9の爆発など、悲しい出来事もあった。

そんな想い出を一つひとつ振り返る余裕もなく、新しい年が始まった。そして今年2017年もまた、昨年に負けず劣らず、多くの宇宙開発の話題が待ち構えている。

今回は、今年予定されている数多くのロケットの打ち上げや探査機の活動のなかから、特に注目したいものを紹介する。

なお、基本的には2016年12月31日までの情報を基にしているため、今後予定が変更される可能性があることにご留意いただければと思う。また文末に、ロケットの打ち上げ予定などを掲載しているWebサイトを紹介しているので、最新の情報はそちらをご参照いただきたい。

1月14日以降: 「ファルコン9」ロケット打ち上げ再開

昨年9月、打ち上げに向けた試験中に爆発事故を起こしたスペースXの「ファルコン9」ロケットが、約4カ月のときを経て飛行再開に挑む。

積み荷は、衛星通信会社イリジウムの次世代衛星「イリジウムNEXT」で、小型の衛星を10機まとめて打ち上げる。打ち上げは当初1月8日を目標にするとされていたが、連邦航空局(FAA)からの承認待ちと、悪天候などを理由に、11日現在は14日以降が目標となっている。

スペースXは、もとより2017年に多数の衛星打ち上げを予定していたことに加え、昨年の事故で打ち上げられなくなった2016年後半分の衛星も残っているため、今年だけでも20機以上、1カ月のうちに約2機のペースでの打ち上げが予定されている。この打ち上げ再開がうまくいくか、そして予定どおり毎月2機の打ち上げが続けられるかが注目される。

(事故の経緯、原因解明の顛末の詳細は、連載『スペースXの「ファルコン9」ロケットはなぜ爆発したのか』をご参照ください)

爆発事故を起こしたファルコン9 (C) USAF

打ち上げ再開に向けた準備が進む (C) Iridium

1月14日以降: 世界最小のロケット「SS-520-4号機」打ち上げ

SS-520-4号機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した超小型ロケットで、2段式の観測ロケット「SS-520」に、小さな第3段を追加するなどし、人工衛星の打ち上げ能力をもたせている。

全長は約10m、直径0.5mと非常に小さなロケットで、打ち上げに成功すれば、世界最小の人工衛星打ち上げロケットとなる。搭載するのは東京大学が開発した、質量約3kgの「TRICOM-1」で、大気圏に再突入するまでの1カ月ほどのあいだに、カメラによる地球の撮影や通信の中継などの試験を行う。

ちなみに、JAXAではSS-520による衛星の打ち上げを続ける予定はないと明らかにしており、衛星の打ち上げは今回限りになる可能性が高い。

当初、打ち上げは1月11日に設定されていたが、気象条件が打ち上げに適さないことで延期となった。11日現在、新しい打ち上げ日は未定で、決まり次第発表するとされている。

SS-520-4 (C) JAXA

SS-520-4で打ち上げられる超小型衛星「TRICOM-1」

3月: インドの大型ロケット「GSLV Mk-III」打ち上げ

インドの大型ロケット「GSLV Mk-III」が、完成形として初めての打ち上げを迎える。

GSLV Mk-IIIは地球低軌道に約8トン、静止トランスファー軌道に約4トンの打ち上げ能力をもつ。インドがこれまでに開発したなかでは最大のロケットで、世界の大型ロケットに肩を並べるほどの性能をもっている。

初打ち上げは2014年12月に行われたが、このときは第3段がダミーで、実機は搭載されなかった。第1段と第2段の検証が目的だったこと、また液体水素と液体酸素を使うエンジンの開発が遅れていたためであるが、その後開発は順調に進み、第3段も完成したことから、完成形での打ち上げが行われることになった。

また実質の初打ち上げながら、質量3.2トンの通信衛星「GSAT-19E」を搭載する。

(2014年のGSLV Mk-IIIの試験打ち上げの詳細は、『市場のダークホースとなるか!? - インドの新型ロケット「GSLV Mk-III」』をご参照ください)

2014年に打ち上げられたGSLV Mk-IIIの試験機 (C) ISRO

4月: 中国の新型補給船「天舟一号」打ち上げ

昨年9月、中国は宇宙ステーション実験機「天宮二号」を打ち上げ、翌10月には2人の宇宙飛行士が乗った「神舟十一号」を天宮二号へ送り込んだ。2人の飛行士は1カ月にわたる滞在を終えて帰還。中国の宇宙ステーション建造に向けた準備がまたひとつ進んだ。

そして中国はこの4月に、天宮二号へ向けて、新型の無人補給船「天舟一号」を打ち上げる。天舟一号は天宮一号、二号とほとんど同じ形、寸法をした大型の補給船で、打ち上げには昨年初打ち上げが行われたばかりの「長征七号」ロケットが使われる。

中国は2018年から、大型の宇宙ステーション「天宮」の建造を開始するとしており、この天舟一号の打ち上げはそれに向けた最後のステップのひとつとなる。

(中国の宇宙ステーションの詳細は、『中国が宇宙ステーションをもつ日』をご参照ください)

天舟一号の想像図 (C) CMS

春~夏ごろ: 超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」の初打ち上げ

スペースXが開発中の超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」が、いよいよ初打ち上げを迎える。

ファルコン・ヘヴィは同社のファルコン9の両脇に、ファルコン9の第1段機体を取り付けたようなロケットで、打ち上げ能力は地球低軌道に54.4トン、静止トランスファー軌道へは22.2トンというきわめて大きなもので、現在運用されているロケットのなかで最も強力なロケットになる。

本来、打ち上げは2016年末に予定されていたが、同年9月のファルコン9ロケットの事故の影響などで延期された。

ファルコン・ヘヴィの想像図 (C) SpaceX

組み立てが進むファルコン・ヘヴィ (C) SpaceX