――御社では今回発表されたカードだけでなく、働き方に対する施策をいくつも始められていますが、本格的に取り組まれたのはいつごろからですか?

本格的には2013年です。それ以前にも長時間労働への対策は行っていて、緩やかに減少してはいましたが、手ごたえのある削減はできていませんでした。2013年は「朝型勤務」を取り入れた年で、長時間労働対策へ本腰を入れよう、という流れになりました。

――朝型勤務を軸に……ということは、やはりそれまでは残業が多くなりがちだったのでしょうか?

お客様に少しでもよいものをお届けしたいという思いは今も昔も変わりません。そう務めるあまり、労働時間に対しての意識については、優先順位が下がってしまう傾向がありました。

――システム関連の業種の方は夜型生活のイメージがあるのですが、朝型勤務へ取り組んだ当初の社内の反応はどんなものだったのでしょう?

正直、一言で言えば「無理だ」というものでした(苦笑) これは経営層あるいはマネージャー層も含め、大なり小なり出ていた反応です。その理由はいくつかあって、お客様に対して朝型にシフトすることをどう伝えるか、あるいは業界のスタンダードと反するという声もありました。

――そこから3年経過して、今現在は「朝型勤務」は定着していますか?

はい、定着しています。一定割合の、さまざまな社員が朝型勤務に取り組んでいます。

朝型勤務と言ったときの印象として、仕事を朝にシフトしてほしい、と会社が社員に要請している印象を持たれやすいと思いますが、そうではありません。

それまで、社員の多くは「夜も含めて時間がある」感覚で仕事をしていたように思います。この状況を転換し、定時勤務(同社の場合9:00~17:30)の基本に立ち戻ってみましょう、というのが朝型勤務奨励の肝です。9:00~17:30という枠を改めて押し出すことで、初めてそこで「時間が有限である」という意識に変わる。それが狙いなんです。

併せて、一定時刻以上の夜間、原則平日の20時以降は原則勤務禁止、22時以降および休日を勤務禁止にしました。朝に来て仕事をしている社員は一定割合でも、社員全員が朝型勤務によってタイムマネジメントを実施するようになりました。

――御社ではスライドワーク制度も併せて行っていますね。必ずしも定時に出社しなくても、タイムマネジメントを行うことが肝要だということですね。

そういうことになります。ただ、朝のほうが一般的に集中力は持続しやすいですし、朝にひとかたまりの仕事を切り出して行うとすると、それにかかる時間を含め、社員自身が考えて業務にあたることができます。

――スライドワークは朝型勤務と同時に検討されたのですか?

スライドワークを開始したのは2016年4月からで、朝型勤務開始後に検討を始めました。朝型勤務がある程度定着してきて、タイムマネジメントに対する意識が高まってきたので、仕事のしやすさを考えてもう少しフレキシビリティを持った働き方について、社員の要望を聞きながら検討して開始しました。

利用者は徐々に増えていますが、これは絶対使ってほしいという推奨制度ではなく、自由度が必要な社員の手段として提示しているものです。今は増えていますが、定着して一定の割合に落ち着くと推測しています。