Microsoftが10月に発表した「Surface Dial」は、クリエイター以外の利用者にも操作デバイス革命を起こす可能性を秘めている。日本市場への投入時期は執筆時点では未定だが、今回はSurface Dialの狙いと機能に注目したい。

「Surface Studio」と組み合わせた「Surface Dial」。米国での価格は99ドル

Surface DialはBluetoothで接続し、3,600段階のダイヤルを回したり押したりすることで操作を行うデバイスだ。上図のように「Surface Studio」のディスプレイ上に置いて、オンスクリーン機能による動作が可能。Surface Pro 4やSurface BookではSurface Dialを机の上などに置き、オフスクリーン機能と呼ばれるモードで利用する。

なお、Microsoft VP Devices BusinessのBrian Hall氏は来日時に、Surface Pro 4やSuface Bookでもオンスクリーン機能を可能とするシナリオも想定していると述べていた。これはSurface DialがSurfaceシリーズ専用ではなく、Windows 10のAPIに沿って動作するデバイスだからだろう。実際にデスクトップアプリでもUWPアプリでも動作するようだ。

Surface Dial interactions」や日本マイクロソフト エバンジェリスト 高橋忍氏のブログから、メニューの出し方や項目の選択方法、回転時のイベント発生などのサンプルコードを見る限り、既存アプリケーションへの実装自体は簡単だ。

単4アルカリ乾電池2本で動作するSurface Dialは、1日4時間程度の使用で1年利用可能

さて、Surface Dialはフォトレタッチや3D CADといったクリエイティブな用途が想定されがちだが、「今以上にアプリを直感的に扱うことができるか。そのあたりがむしろ大事」(高橋氏)だ。海外ではこのテーマにチャレンジしている強者がいる。Winbetaの記事によれば、Surface DialをVisual Studio 2015のデバッグツールとして利用可能にした開発者が現れたという。

Microsoft MVPでもあるNico Vermeir氏は自身のブログで、Visual Studio 2015およびSDK、Windows 10 バージョン1607、そしてSurface Dialを組み合わせたデバッグ環境を披露した。具体的にはSurface Dialをクリックしてブレイクポイントを設定し、Surface Dialを回転させることでステップを確認している。ソースコードはGitHubで公開済みのため、今後日本市場にSurface Dialが投入された暁には、このようなSurface Dialの可能性を試すことができるだろう。

Surface Dialを使ってコードのデバッグを行っている(Nico Vermeir氏のYouTube動画より抜粋)

最後にSurface Dialの可能性について推考したい。マウスホイールは1985年に開発され、1995年に製品化されている。マウスホイールは、指先によるスクロールという新たなUX (ユーザー体験) を提供した。Surface Dialも同様に、「右手はマウスやペン、左手はSurface Dial」といったようにキーボードに代わる操作デバイスとなりうる。

Surface Dialをクリエイター向けのデバイスとして捉えるのは自然だが、「新たなUXを利用者に示すデバイス」と見るべきではないだろうか。芸術には固定概念の破壊という側面がある。Surface Dialは、マウス+キーボードという伝統を破壊し、現状を変える可能性を持つ。果たして新世代のスタンダードデバイスとなるか、Surface Dialの発売を心待ちにしたい。

阿久津良和(Cactus)