この10年間を責任者が語る。一時期は存続の危機にも

次に、開発の責任者である章 慶元(ショウ ケイゲン)氏がWPSについて説明。WPSはWord Processing Systemの略で、MS-DOS時代は中国のほとんどのPCが「WPS for DOS」を採用しており、KINGSOFTは中国ソフトメーカーの代名詞となったという。

KINGSOFT Office Software Corporation CTOの章 慶元(ショウ ケイゲン)氏

KINGSOFTのOfficeソフト「WPS」の歩み。DOS版のころは中国市場をほぼ独占

一方、1995年にマイクロソフトが中国に進出した結果、2000年にはシェアが2%まで激減。競争力を失い、存続の危機に陥った。そこで、2005年にMicrosoft Office互換、安価、低容量で開発。多数の大手企業や国家機関も利用するようになり、個人版を無料で提供するという手法を用いて、汎用性の高さとコストパフォーマンス、互換性を武器してシェアを20%にまで回復させた。

一方、Microsoft Officeが中国市場に参入し、企業存続の危機となった

今までのソースコードを捨て、Microsoft互換製品として再出発して復活

中国国内の大手企業や国家機関でも採用された

2011年、マイクロソフトがモバイル対応に遅れるなか、いち早くWPS for Androidを発表。現在は51の国と地域に47カ国語対応で提供している。現在では1億ダウンロードを突破し、昨年(2015年)、Google社から「Best of Application/Editor's Choice/Top Developper」を受けた。こうした迅速な対応によって、現在は中国メーカーのほぼすべてのスマートフォンにプリインストールされ、月間アクティブユーザーも1億を突破している。

マイクロソフトのモバイル戦略があいまいだった隙を突く形で、いち早くAndroid製品をリリース

中国内のスマホでプリインストール

世界はアクティブユーザーで評価。月間アクティブユーザーでは、PC/モバイルともに1億を突破

また、無償利用が可能な広告モデルを導入することで、広告が重要な収益源になっている。先日の「独身の日(11/11)」、アリババでのセール広告においては数千万元の広告収入を得たとのこと。広告版は前年比で100%成長を遂げており、企業板をしのぐ勢いを見せている。

無料で利用できる代わりに広告を出すモデルも、順調にユーザー数を伸ばしている

そして、新たな突破口と発展を模索してWPS+戦略を掲げた。クラウドをベースに共同ドキュメント編集・共有を行うもので、中国ではすでにリリースされている。一例として、WPSのクラウド共有を紹介。これはグループ内のドキュメントとIMツールとなる。グループから外れると、ローカル保存されていたドキュメントもアクセス不可になるという。

モバイルに対しては、「PCよりも小さい画面」「画面で閲覧するだけで印刷しない」という2つの条件を設定。PCでスマホの文書ファイルを作成する「WPS H5 Maker」と、情報量の多いPCのドキュメントを最適化表示する「WPS 写得」を、体験URLを含めて紹介していた。

今後のKINGSOFTの戦略となるWPS+。現在これだけの製品を中国市場でリリースしている。メールアプリはシャオミのスマホで標準採用されている

IMとドキュメントを共有するアプリ。グループから外れるとドキュメントの閲覧権もなくなる

スマホ閲覧向けのドキュメントを作成するWPS H5 Maker

スマホ閲覧向けにドキュメントを調節するWPS 写得