事例4:企画プランニングのケース

・イベント向けに活用

3D PDFの活用はイベントなどの分野でも広がりを見せている。例えば、最近ではダム見学イベントの参加者に向けて、ダムおよび発電施設の内部を3Dコンテンツ化して、ホームページ上で公開したり、ガイドの資料として活用するという事例がある。

こうしたコンテンツでは、見学ルートを選択すれば3Dビューで見ることができ、施設の主要部分をPDF上でクリックすれば、その部分の説明が表示され視覚で理解できるように設定されている。通常ではあまり見ることのないダムの設備などをアニメーションで捉えることができ、すぐに情報伝達できるので、あたかも施設の内部を実際に見学しているような疑似体験を得ることができる。また現地の施設に訪問する前に閲覧しておけば、実際に現地を見たときに理解がより一層深まるというわけだ。

事例5:CAEとCAMと連携したケース

システム連携の分野ではCADデータだけでなく、CAEやCAMに3D PDFを連携させるニーズも広がりを見せている。

・CAE (構造伝熱解析での活用例)

解析分野におけるソルバー(解析ソフト)は多岐に渡っている。

そのため、設計・開発・生産部門においては、ソルバー毎に異なる解析結果を統一フォマットで確認していきたいというニーズが高まっている。ここでも3D PDFがその効果を発揮する。

ソルバーからの解析計算情報をテキストファイルに変換し、その解析結果を3D PDFに出力する。3D PDF上では、解析結果の拡大、縮小、回転、アニメーション表示が可能となるため、CAEビューア 特有の複雑な操作方法の習得が不要となる。またデータが軽量であり、セキュアなPDFであるため、解析結果をメールで送信できるなど、個人PCで管理することもできる。

・CAM(複合加工システムとの連携)

CAMとの連携についても実用化に向けて動き出している。昨今、製品を生み出す工作機械は、旋盤加工とマシニングが一体した複合旋盤加工機など、より高度で複雑なものになってきている。そのため加工方法やモデル形状が複雑な場合には、高度な工作機械を使う現場のスタッフにとって、適切な加工指示書を確認することが必須となっている。その際、3D PDFを使用して、視覚で部品などの加工プロセスを事前に確認することができれば、手違いがなく効率的な作業を行うことができる。生産部門の現場スタッフにおいて確認作業が必要となるケースではそのニーズは著しく高い。

例えば、加工対象となるモデルに対して荒加工/中仕上げ/仕上げといった加工ツールのパスを表示し、これらを3D PDFで表示することにより、モデルを仕上げるプロセスを手順ごとに明確にして、理解していくことができるのである。

CAM (部品の加工プロセスを確認する例)

このように3D PDFは製造業にとどまらず、さまざまな部門においてスタッフスキルおよび品質の向上に役立てることができるのである。

著者プロフィール

川島 徹
キヤノンITソリューションズ
エンジニアリングソリューション事業本部
3Dソリューション開発センター開発二部 部長

製造業におけるものづくり現場で、3D設計の導入からデータ活用/運用のプロセス改革/自動化まで、3D設計効率化支援サービスの推進に取り組む。現在は開発部門を管轄する立場から、3D PDFドキュメントで3Dデータの効果的な活用推進に向けたサービス支援を行っている。