イヤホンやヘッドホンなど、ポータブルオーディオを扱う専門店「e☆イヤホン」が、10月27日に梅田EST店をオープン。6店舗目にして最大の売場面積、ファッションビルへの出店などトピックは多いですが、なんとスマホの販売も始めるというから驚き。e☆イヤホンは今、なぜスマホを売るのでしょうか。オープン前の新店舗にお邪魔して、気になるところを聞いてきました。
梅田ESTはWest、Central、Eastの3エリアに分かれていますが、e☆イヤホンの新店舗はCentralエリアの2階にあります。店舗面積は約640平方メートルで、e☆イヤホンの店舗としては過去最大の面積を誇るとか。どのぐらい大きいのかしら、とわくわくしながら梅田ESTを歩き回りましたが、たどり着いてびっくり。
Centralエリアの2階全てがe☆イヤホン梅田EST店でした。
どうでもいいですが、筆者の自宅面積は約20平方メートルです。e☆イヤホン梅田EST店の約32分の1ですね。
2階に上がって中に入ると、めちゃくちゃな量の製品が並んでいます。
取り扱う製品は約20,000種類、設置している試聴機は約4,000種類だそう。通路は幅にゆとりがあり、とても歩きやすいです。
カスタムインイヤモニター(IEM)も約20ブランドを扱います。IEM製作に必要なインプレッション(耳型)は、e☆イヤホンが定期的に開催するイベントで採取できますが、補聴器メーカーなどで採取したものを持ち込むことも可能です。
中古製品の買い取り・販売ゾーンもかなり広いです。中古販売用の製品は、本稿執筆時点で約3,000種類をそろえているとか。
休憩コーナーも多め。スマホやポータブルプレーヤーの充電スペースもあります。
新品コーナーと中古コーナーの間にあるのは、スマホ販売を行う「e☆スマホン」のカウンター。e☆スマホンは、「e☆イヤホン」から派生した新ブランドです。
e☆スマホンは簡単に言うと、スマホでハイレゾ音源を聴くためのプロセスを、0から教えてくれるサービスです。スマホ選び、イヤホン選び、ハイレゾ再生用アプリ選び、アプリの使い方説明など、すべて担当のスタッフが教えてくれます。なお、気に入ったスマートフォンは店頭でそのまま契約・購入できます。
本稿執筆時点では、KDDIとソフトバンクの2キャリアに対応(今後も拡大予定)。スマートフォンは20機種を扱っており、Androidスマートフォンはすべてハイレゾ対応の製品となっています。ハイレゾには非対応ですが、iPhone 7 / 7 Plusも販売。iPhoneでいい音を聴くためのアドバイスもしてくれます。
試聴機としてAndroidスマホ5機種+iPhone 7 / 7 Plusを用意しており、耳で聴き比べながらスマホを選べるのが大きなメリット。スマホと一緒に置いてあるイヤホンは、e☆スマホンのスタッフがスマホに合わせて選んだオススメ製品です。
社長に質問。どうしてスマホを売るの?
大量のヘッドホンや高級なハイレゾプレーヤーを見たあと「e☆スマホン」コーナーに来た筆者は「スマホと一緒に高いヘッドホンも買ってほしいってことなんじゃ……? 」と、つい邪推してしまいました。が、本当のところはどうなんでしょう。代表取締役社長の大井裕信さんに詳しくきいてきました。
―― まず、お持ちのかっこいいスマホが気になるんですが!
大井社長「MarshallのAndroidスマートフォンですね。海外で発売されているモデルで、日本では未発売なんです。e☆スマホンのカウンターに置いてはあるけど、販売できるかはわかりません(笑)。でも、こういった『サウンド面に力を入れている海外製のスマートフォン』など、独自の販売ルートを開拓したいとは思っているんですよ。開拓という意味では、今後SIMカードを取り扱ったり、e☆スマホンのオリジナルスマホを作ったりできたら、というアイディアもあります」
―― スマートフォンでいい音を楽しんでもらって、ゆくゆくはあちら側(高級なヘッドホンやハイレゾプレーヤーが並んでいる場所を指しながら)に誘いたい……とか?
大井社長「いやいや、そんなことはないですよ! もちろん、スマホでのハイレゾ体験をきっかけに、本格的にオーディオを始めたくなる人もいるかとは思います。ただ、最初から『あちら側』をお客様にとってのゴールに設定するつもりはないですね。
とにかく、『スマホでもこんなにいい音が聴けるんだ』というのをもっと知ってもらいたいんですよ。スタッフの中には、AK70(※)とカスタムIEMを使いながら『まだまだ入門です! 』なんて言う子もいるんですが、いやいや大多数の人にとってそれは普通じゃないから! みたいな(笑)。それに、いきなり本格的にハイレゾを始めようにも、必要なアイテムが多くてかさばるじゃないですか」
※高級オーディオブランド、Astell&Kernのエントリー向けハイレゾプレーヤー。直販価格は税込69,980円。
―― スマホに加えて、ヘッドホン(イヤホン)、プレーヤー、ポータブルアンプなどを持ち歩くのは、ちょっぴり大変だと感じる人もいるでしょうね。
大井社長「そうなんですよ。だから、まずはスマホで始めればいい。本当の意味での入門は、スマホで音楽を聴くことです。(e☆イヤホン事業開始当初の)9年前は『イヤホンをちょっと変えるだけで、こんなに音が良くなるんだよ! 』というのを伝えようとしていましたが、これまで『イヤホン』と言っていたのを『スマホ』に変えた、という感じですね。
個人的にもったいないなあと思うのは、音楽をたくさん聴いたり、フェスによく行ったりする人が、日常的に『いい音』で聴いていないことなんですよ。音楽は大好きだけど、イヤホンやプレーヤーにはこだわっていない、というパターン。そういう人にとっても、いい音を聴くきっかけになってほしいんです」
―― とてもわかる! 音楽好きだけど機材はそこそこ……って人、結構いますよね! では、e☆スマホンの今後の展開を、もう少し教えていただけますか。
大井社長「既存のe☆イヤホン店舗に展開したあとは、全国展開を目指します。e☆イヤホンは都市部を中心に展開していますが、e☆スマホンは都市部以外にも展開しやすいパッケージだと思うんですよね。これまでオーディオに興味がなかった普通の人こそ、巻き込んでいきたいと考えています」
「e☆イヤホンがスマホ販売」と聞いたときは驚いたのですが、オーディオマニア以外の人に「いい音」を聴いてもらうためのアプローチとしては、とても真っ当だなあと、今回の取材で納得しました。オーディオに対するハードルを下げたい、という姿勢を反映しているのが、「e☆スマホン」なんでしょうね。今後は、e☆イヤホン梅田EST店とともに、e☆スマホン事業の取り組みにも、要注目です。