現地消費者との接点構築が急務に

「(日本の)企業・自治体には、(アジアの)現地消費者と情報を共有する接点がなく、(現地消費者との)つながりが構築できていないという共通の課題がある」。FJC設立会見に登壇したJTBの高橋広行社長は、アジアの消費者と接点を構築できていない日本の現状に危機感を示した。日本には優秀な製品やコンテンツが存在するにも関わらず、アジアの最終消費者に上手くリーチできているとは言えないというのが同氏の考えのようだ。

この危機感は4社に共通している様子。例えば日通の渡邉健二社長は、「(物流業の顧客である)消費者向け商品を扱う製造・販売業者から、アジアの消費者の生の声、ニーズを把握することが難しいとの声」を聞くという。三越伊勢丹HDの大西社長は、小売業にとって消費者の潜在的なニーズを捕捉することが最も重要と指摘したうえで、東南アジアに展開している店舗で細かなマーケティングをできているかについては「疑問だ」と語る。JAL執行役員の加藤淳氏によれば、同社はアジアの企業との関係こそ構築できてはいるが、最終消費者による認知度はまだまだ高くないという。

FJC設立の会見に登壇した(左から)JALの加藤氏、日通の渡邉氏、FJCの藤井氏、JTBの高橋氏、三越伊勢丹HDの大西氏

きめ細やかなマーケティングが重要な段階に

昨年度の訪日外国人は1974万人。今年度は最終的に2,000万人を超える見通しで、勢いに陰りは見られない。日本政府は2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という野心的な目標を掲げている。訪日外国人の増加に伴い、訪日外国人旅行消費額も急激に拡大。2012年の1兆846億円が2015年には3兆4,771億円まで伸びた。しかし、1人あたりの消費額は今年に入って減少を続けている。

訪日外国人の旅行形態は今や、個人旅行(FIT)が8割を超えているという。個人旅行者が日本でどんな体験を求め、何を買いたいのかは各人各様で、絞り込むのは困難。定番の商品・体験を並べておけば自動的に売れるというフェーズが終わりつつあるとすれば、これからは旅行者各人の意向を探る、きめ細やかなマーケティングがますます重要になってくるはずだ。

こういった状況に対応するように資本・業務提携を結んだJTBら4社。この動きは時宜にかなっているようにも見える。FJCが提供するサービスを利用する企業・自治体が増えるかどうかが今後の焦点だが、各分野の一流企業が顔をそろえる同プラットフォームの求心力は高そうだ。Fun! JapanではWEB会員とFacebookファン数で計1,000万人の規模を目指すというが、これだけのユーザーの属性情報を把握し、上手く情報発信ができれば、日本のインバウンドビジネスは「受け身」から「攻め」への転換を図れるかもしれない。