フェイスブック傘下のメッセージアプリ「WhatsApp」は、Facebookアプリとの間で、データの連携を行う規約変更を行った。2016年1月に年間1ドルの利用料を廃止しており、フェイスブック流の収益化に向けて加速することになる。一方で、WhatsAppのデータ共有は、ユーザーやプライバシー団体から早くも反対の声が上がっており、WhatsAppをフェイスブックに売却した創業者らは頭を抱えているかもしれない。

フェイスブックに買収されたワッツアップ

ワッツアップは2009年創業のインスタントメッセージプラットホームを提供する企業だ。1通ごとに料金がかかるSMSのかわりに、年間1ドルの使用料で広告なしで無制限にメッセージのやりとりができる、クロスプラットホームのスマートフォン向けアプリとしてWhatsAppは人気を博した。

フェイスブックが買収したWhatsAppアプリ

2009年を振り返ると、iPhone 4が登場し、Androidデバイスも充実し始めた頃。しかしBlackBerryやWindows Mobile(現在のWindows Phone)、Nokiaといった、複数のスマートフォンプラットホームが乱立しており、その垣根をまたぐメッセージサービスとして重要度が高かった。現在、月間ユーザー数は10億人を超えている。

フェイスブックがワッツアップを220億ドルで買収したのは2014年2月。当時の従業員は55人。ワッツアップの売上は1020万ドルに対して、1億3800万ドルの赤字企業だった。しかし、買収発表後、フェイスブックの株価は20%の上昇があった。

今回の規約変更のインパクト

フェイスブックのワッツアップ買収後、2016年1月に前述の1ドルの年間使用料の廃止し、4月にはユーザー間のエンドツーエンド暗号化を実施するなど、機能面、サービス面での変革が進んできた。そして今回、Facebookアプリとのデータ共有を含む規約変更が発表された。

FacebookとWhatsAppとのデータ共有によって、電話番号などの情報をFacebookと共有することになる。これによってユーザーは、WhatsApp上での知り合いかもしれない他のユーザーを見つけやすくなるなどのコミュニケーション上のメリットが得られるとしている。

その一方で、WhatsAppはこれまでのプライバシー方針を変えないことを買収後にも明言してきたことから、その方針が変わってしまうのではないか、という懸念が拡がっている。同社のブログでは2012年にも、広告に対して「人々の知性を冒涜する」との痛烈な批判を行ってきた。

しかし親会社となったフェイスブックは、人々のデータを使った広告の最適化を行い、収益を伸ばしてきた企業だ。前述の通りエンドツーエンド暗号化によって、WhatsAppもFacebookもメッセージの中身について知ることはできないとしている。

今後、ユーザーからの利用料収入の代わりに導入されるとみられる、企業向け有料アカウント。ユーザーと企業がWhatsApp上でつながっているかどうかというデータは、フェイスブックにとっては、非常に精度の高い行動や趣向のデータとなり得る。フェイスブックが今後、メッセージングとSNSの両面を通貫する企業向けのサービスを用意することは容易に想像できる。