マイクロソフトは6月13日、「LinkedIn」の買収を発表した。その金額は263億ドルに上り、SNSの買収としては最大規模となる。また、現在のマイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏にとって初の大規模買収となった。LinkedInと、これを買収したマイクロソフトの狙いはどこにあるのか。

マイクロソフトがLinkedIn買収を発表。写真中央:マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、写真左:LinkedInのジェフ・ワイナーCEO、写真右:創業者のレイド・ホフマン氏

LinkedInとはなにか

LikedInは、2003年5月に開設されたビジネスプロフェッショナルに特化したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。人々は自分の学歴やキャリア、スキルを登録し、ビジネス上のつながりを記述していく。ユーザー数は世界で4億3300万人、有料ユーザーは200万人に上る。

LikedInはビジネスプロフェッショナルに特化したSNS。学歴、キャリア、スキルにポイントを置いたのが特徴

必要なスキルを持つ人材を探すには、LinkedIn上でメッセージを送ることができるが、直接繋がりのない相手には、共通のつながりがある人を介して、あるいは返信保証付きの有料でメッセージを送る仕組みだ。また企業は、求人情報を掲載することもできる。

LinkedInは個人のキャリアが基本であるため、例えばグーグルやアップルの人の出入りを見つける手段としても利用できる。どんな人材がどんなポストに就任したか、という情報は、その企業が何をやろうとしているのかを推し量る材料の1つとなるのだ。

日々のツールになれなかったSNS

筆者は2012年に『LinkedInスタートブック』(日経BP)を上梓した。当時、日本ではあまり活用されてこなかったSNSについて紹介した書籍だった。この中で、MIT Media Labの所長を務める伊藤譲一氏へのインタビューの一節が、LinkedInの使い方を物語っている。

「僕自身、LinkedInは人を探すとき、あるいは人からコンタクトをもらったとき、企業について知りたいときに参照するツールとして毎日開いています」

米国においては、LinkedInにプロフィールがないことは、キャリアや求人市場に存在していないことと同義だ、と言われるほど、仕事にまつわるFacebook以上に重要なプロフィールであるとの認識がある。

その一方で、FacebookやTwitterのような情報発信や日々のコミュニケーションを行うとためのツールではない。LinkedInにもニュースをシェアしたり、プロフェッショナルが注目するニュースをまとめるPalse機能が搭載されているが、残念ながら「毎日チェックするウェブサイト」にはなれずにいた。

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