スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「ハイレゾ」についてです。

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ハイレゾとは、High Resolution(高解像度)の略語です。ディスプレイにおける画素数の多さを指していうこともありますが、スマートフォンを含むデジタル機器では「音楽CDよりデータ量が多い音源」、およびその再生環境を指すことが一般的になりつつあります。

音源に関していう場合、「音楽CDを超えるデータ量」がひとつの目安です。一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)が定めた基準では、サンプリング周波数 -- 1秒間に音声のアナログ波形をデジタル変換/標本化する頻度、単位はHz -- または量子化ビット数 -- 1回の標本化あたりの情報量、単位はbit -- のいずれかがCDスペック(44.1kHz/16bit)を超え、もう一方がCDスペックと同等以上であることがめやすとされています。

さらに、「不可逆圧縮ではない」ことも必須に近い条件とみなされています。AACやMP3など不可逆圧縮方式の場合、オリジナルの音源を圧縮するときに情報を間引いてしまい、完全には復元できないためです。一方、FLACやALACなどの可逆圧縮(ロスレス)方式は情報を間引かないので問題ありません。PCMデータそのままのWAVやAIFF、サンプリング周波数を高め1bit信号の粗密で信号を記録するDSD方式も、ハイレゾ音源として利用されます。

それらオーディオフォーマットを再生できる端末が「ハイレゾ対応スマートフォン」ということになりますが、その先はオーディオ機器としての仕様で語られることになります。サポートされるサンプリング周波数/量子化ビット数の上限など性能面もありますが、音質指向の部品を採用しているか、有効なノイズ対策を講じているかなど、スマートフォンというよりはオーディオ機器としての作り込みが評価の基準になります。

スマートフォンのデジタル信号を外部機器(ヘッドホンアンプ/USB DAC)に出力する形のハイレゾ再生もあります。この場合、音質や対応オーディオフォーマットは外部機器に大きく左右されることになりますが、ハイレゾ再生という繊細さが求められる処理にはむしろ好適です。

ただ音を出力するのではなく、音の微妙なニュアンスを再現するための創意工夫がハイレゾ再生には求められます