事実、同社の第2四半期決算の資料中でも、「想定を上回るスピードで事業環境が変化。対応策に着手したものの、第2四半期業績低迷」と環境の変化スピード想定しきれなかったことを認めている。

東京・銀座

浮上のカギは個人旅行への対応策

ただ、消費動向の変化について同社も手をこまねいていたわけではない。同社の主力顧客である団体ツアー客の伸び率が鈍化していること。それによって、ゴールデンルートの一極集中から地方の顧客分散化がおきていること。「モノ」から「コト」への消費傾向の変化が起きていることは、先に述べたように同社でも分析。これに対応すべく「モノ」と「コト」の複合施設の準備を進めるほか、昨年にも、旅行博などといったイベントに出展したり、ドコモとキャンペーンを組むといった個人旅行向けの施策をおこなってきた。

今年に入ってからも、個人旅行の増加に伴って訪れる地域が分散化している現状に対応するため、国際線利用が伸びている地域の店舗展開に重点を置き店舗の最適化や、店内にツーリストインフォメーションカウンターの設置を進めている。このカウンターによって訪れた人は買い物だけでなく、事前予約済みの各種チケットや、Wi-Fiルーターの引き渡しなどのサービスを受けられる。訪日外国人観光客向けのインフォメーション施設は、旅行業などでも設置が進められている。そこで客のニーズを拾い、新しい旅行商品を作ったり、ニーズにこたえたサービス展開を検討できたりといったメリットがあるのだ。さらに、社内の人材育成組織で、多言語に対応できるスタッフの養成にも力を入れ始めている。

中国人団体客による“爆買い”。依存脱却の手は打ち始めていた。だが、その速度に対応できなかった。

そして、これまで述べてきた爆買い減速要因を加速させたもの。それは、相次ぐテロや難民問題、イギリスのEU離脱などといったことの影響を受け、円高傾向が進んだことが言えるだろう。それによって、訪日外国人観光客の財布の紐はより固くなった。

売上高の約9割が国内の店舗事業

売上高のうち国内の店舗による割合が88.7%と、事業のほとんどである同社であるから、為替変動によるリスクは今後も消えない。ラオックスは、今後も引き続き訪日観光客は増加傾向にあると、インバウンド市場を分析。対応策を強化し、ラオックスの進化を推進するために、中期経営計画を9月メドで公表するとしている。

爆買い依存脱却は急務だが、ラオックスが打つ手は特効薬となりえるだろうか。

今回の決算は、ちょうど爆買い減速と、爆買い依存脱却のための投資が重なった時期となる。ここの痛みを耐え、成長軌道に戻せるかどうか。同社の真価が問われるところ。まずは、中期経営計画の中身に注目したい。