iPad Pro(12.9インチ)が登場したのが昨秋。Apple PencilとSmart Keyboardという特徴的なアクセサリを用意し、ユーザーからの反響も上々で、今年になってからは新たに9.7インチモデルも投入された。パワーと性能と機能を兼ね備え、それがゆえに、開発者やデベロッパからの評価も高い。究極のアップグレードとも、究極のパソコンの置き換えとも言える存在であるiPad Proのポテンシャルを、有力デベロッパの人気アプリを紹介するとともに、改めて本稿でチェックしてみたい。
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最初に紹介するのはPSOFTが提供している「Zen Brush 2」だ。和の筆をコンセプトにして書を楽しんだり絵を描いたりできるというアプリで、App Storeの「Best of 2015 今年のベスト」に選出されている。筆の動きによるランダムさを表現できるのが特徴で、使ってみると、握っているのはApple Pencilなのに、墨のにじみ具合や予期せぬ濃淡の差が生まれるなど、まるで本物の筆で書いているような錯覚に陥った。同じものを二度と表現できないという面白さもまたある。
Apple Pencilの筆圧と傾きに対応していて、 筆圧と傾きの角度によって線の形や濃淡が変化していく。ブラシのワイヤーフレームをオンにすれば、Apple Pencilを傾けることで筆先(ワイヤフレーム)も同じように傾いているのが確認できるので、これは是非試してみて欲しい。また、にじみの表現は処理にパワーが必要だということだが、これはiPad Proに搭載されたA9Xプロセッサによりあっさりクリアできたようである。こういった処理が行えるのはまた、和筆を3Dモデルでシミュレートした新描画システムを搭載したことによるところが大きい。さらに、Apple Pencilの取得情報の精度の高さもキモだ。これにより、正確な描画位置を確保するとともに、筆圧による太さの変化、傾きといったリアルな表現を可能としているのである。従来のお絵かきアプリでは難しかった「とめはね」や「はらい」の表現も見事に再現している。
UIもとてもシンプルで、ツールを多くし過ぎて選択に迷うことがないよう、例えば、基本となるカラーパレットも黒と赤の二つしかない、という風になっている。簡単な操作も特徴の一つであるといえよう。本物の筆ではありえない「消しゴム」ツールも装備しており、修正もとても簡単に行える、墨で紙に書く場合、失敗したら書き直しになるので、このあたりはデジタルツールならではという気がする。消しゴムは積極的なクリエーションの場面でも活躍する。一度ベタ塗りした箇所の一部をサッと消すことで網掛けしたような効果を演出できるのだ。
最新バージョンではJPEGとPNGファイルへの書き出しが可能となっている。PNGへの書き出し対応はユーザーからの要望が多かったようだ。PNGなら背景を透明にできるから、他のアプリと連携させるのに都合が良い。また、ガイド機能も追加され、中央の位置や文字の大きさを考慮し、バランスよく描画することができるようになった。
ユーザーからの反応としては、「(自分は)字が下手なのにZen Brush 2で書くと上手くなったような気がする。気がするだけでなく、実際に上手く見える」といったフィードバックが得られているとのことだが、そもそも開発者からも、自分の字を上手く見せたいという想いがあったからだいう話だ。