WPC2016の最終日には、日本からの参加者を対象にしたJapan Regional General Sessionが開催され、384人の日本人参加者とともに、日本マイクロソフトの平野拓也社長、樋口泰行会長をはじめとする日本マイクロソフト幹部も参加。日本マイクロソフトのパートナー戦略が発表されたが、そこでもやはり中心はクラウドであった。

日本マイクロソフトの平野社長は、2016年度の重点課題として、「顧客のデジタルトランスフォーメーションの推進」「クラウド活用の推進」「法人分野でのWindows 10の普及」、「データカルチャーの醸成とデータプラットフォーム(SQL Server)の拡大」「ISVとSIによるクラウド時代のパートナーシップ」「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」の6つをあげ、それらの取り組みを通じて、2017年度にはクラウドの売上比率を50%にすること、クラウド時代のパートナーシップを推進し、CSP(クラウド ソリューション プロバイダー)参加企業を現在の600社から倍増させることなどを改めて強調。

日本マイクロソフトでは、2017年度にクラウドの売上げ比率で50%を目指す

「ここ数年は、クラウドに行くぞ、ということを言ってきた。どんな使い方ができるのか、どういう風に売るのかといったことが中心であったが、いまでは具体的な活用事例が増えた。コグニティブサービスを加えたクラウドソリューションにより、デジタルトランスフォーメーションを推進し、日本の顧客のビジネスに、精一杯貢献できるように努力したい」と述べた。

また、日本マイクロソフト 業務執行役員 パートナービジネス推進統括本部・浅野智統括本部長は、「GDPに占めるIT市場の比率は5%。そして、それに関わる人の部分は20%を占める。これがこれまでのIT産業の対象。しかし、デジタルトランスフォーメーションは、デジタルで結ばれたモノや場所も対象になる。ここはCOGSと呼ばれる領域であり、GDP全体の60%を占める。日本のIT産業が、300兆円もの市場を対象にビジネスを行えるチャンスが生まれる。これが正しい市場の見方。IDC Japanでは、2020年までに国内のパブリッククラウド市場は、2015年比2.4倍の6370億円に達すると予測しているが、我々の今年度のターゲットは3倍にすること。肌感覚では、これだけの成長には留まらない」と、今後のクラウドビジネスの爆発的成長を予測。

デジタルトランスフォーメーションによりクラウドのビジネスチャンスは一気に広がる

「クラウドビジネスは、100円、200円の時間課金で、駄菓子屋のような商売だという人もいるが、顧客のつながりがどんどん増え、ソリューションとしての拡大も期待できる」とする。

さらに、これまでのライセンス販売のような製品の再販では、パートナーが得られる利益率が5%に留まっていたものの、クラウド時代のビジネスでは、35%の利益率を獲得できるプロジェクトサービス、45%の利益率となるマネージドサービス、65%の利益率となるパッケージ化されたIPビジネスへと拡張でき、これが定常的な収益源になることを示し、「日本マイクロソフトは、パートナーがこれらの収益を得るためのインフラを提供する会社になる」と述べた。

クラウドビジネスへのシフトでパートナーの収益性を高めることができるという

一方、日本マイクロソフト 業務執行役員 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部の佐藤久本部長は、パートナー向け施策について説明。PaaSやSaaSの認証認可の考え方や、Azure利用ログの違いと具体的活用方法といったAzure SIの実践的トレーニングを行う、SIパートナーのフィールドSE向けトレーニングを9月から提供。来年6月までに1200人の受講を目標にすることを発表。また、東京・品川の日本マイクロソフト本社内にAzure-Hybrid DC検証センターを開設。IIJからExpress Routeの無償検証環境の提供を受けて、Azure PackとAzure Stack検証サービスを提供する支援策も発表した。

Azure-Hybrid DC検証センターの概要

さらに、パートナー企業支援窓口である「Cloud Direct」を設置。クラウドライセンスについての質問や、製品および機能に関する質問を受け付け、パートナーの販売活動の支援を行う。

また、今回のWPC 2016で唯一オンプレミスの話題として取り上げられたSQL Server 2016については、パートナー向けトレーニングを強化していることに言及。Oracle Databaseのフィールドエンジニアを対象に、2016年2月から開始したトレーニングでは、SEで337人、営業で237人が受講。

「トレーニングを受けたSEのうち95%、営業のうち87%が、SQL Serverを提案してみたくなったと回答している。パフォーマンスの高さや、価格の安さを、Oracle Databaseのフィールドエンジニアが実感している」とする一方、「SQL Serverを扱っていない人がこれだけ多かったということの証」と自虐的に総括した。

トレーニングを受けたOracle DatabaseのSEの95%がSQL Server 2016を提案したいという

トレーニング受講者の目標は1200人を見込んでいたが、反響が大きいことから今年度中に2000人にまで拡大する予定だという。

さらに、7月1日付けで、基幹系システムや大規模システムにおけるSQL Server 2016の導入および移行をサポートする無償検証施設を、日本マイクロソフト本社内に設置。HPE Integrity Superdome Xを設置して、検証が行えるようにしているという。

SQL Server 2016への移行を支援する無償検証センターを設置

また、パートナー支援窓口として、電話による問い合わせが可能な「SQL Direct」を新設。7月8日からスタートしたことも発表した。

日本マイロソフトの平野社長は、「2016年度第4四半期(2016年4~6月)には、クラウドビジネスの成長率では、日本法人が世界で1番になった。すでに国内トップ100社のうちの8割が、Azureをなんらかの形で触っていただいている。これをベースに、いかに使い倒していただくか、アップセルにつなげるかを、これから重視していく。ここでは、ISVやパートナーの資産と組み合わせて、シナリオを提案していくことが重要になる。日本マイクロソフトは、『顔が見える』、『安心できる』という声をユーザーからいただいている。ハイブリッドクラウドにおいても圧倒的な差を打ち出した提案が可能になる。その強みを生かしたい」と語る。

パートナー戦略もクラウドを主軸とした体制へと完全シフトした日本マイクロソフトにとって、クラウドビジネスをさらに加速させるための地盤が整ったのは確かなようだ。