2016年のiPhoneと2017年のiPhone

さて、問題はここからだ。携帯キャリアの設定した「2年縛り」というルールがあり、スマートフォンを2年周期で買い換えているユーザーは多いだろう。筆者も日本で所持しているスマートフォンのひとつはiPhoneであり、機種は「iPhone 6」だ。つまり順当にいけば、今年2016年はiPhone買い換えのタイミングとなる。ただ、前述のように「2016年のiPhoneは(デザイン上の)大きな変化はない」といわれ、さらに「2017年のiPhoneでは大きな変化がやってくる」と聞かされれば話は別だ。すでに1年半酷使したiPhoneのバッテリはかなりヘタって心許ないが、騙し騙し「もう1年使ってみるか……」と考えてしまわなくもない。実際、筆者が目や耳にする関係者らのコメントを集めていると、2016年のiPhoneが出てくる直前のタイミングにもかかわらず、出てくるのは「2017年のiPhone」の話ばかりで、余計に悩ましいことになってきている。

今年の始めに「これから3年間でiPhoneに起こることを大胆予想 - 成否を分ける鍵は何?」のタイトルで今後3年間のiPhoneに関する最新情報や考察を簡単にまとめたが、この予想は現実になりつつある。

実際、世界でのiPhoneの売上は頭打ち傾向が強くなり、Appleは次なる成長機会をうかがうべく中国やインドなど人口が多い途上国を中心に積極的に進出している。だがこれら地域での販売増はAppleが当初考えているほどには容易ではなく、すぐに次の作戦を求められるようになる。そこで登場するのが今後3年間の予想でも触れた「製品バリエーションのさらなる増加」で、インドのような途上国だけでなく、既存の成熟市場の中でも特に"Appleファン"と呼べるユーザーをターゲットに「さらに高級モデル」を提供したり、あるいは「iPhone SE」のように「取りこぼしていたユーザーをすくい上げる」という形での拡大を図っていく。

iPhone SE

そして2017年のもうひとつ大きなポイントは「iPhoneの2年サイクル更新の終了」だ。WSJのレポートを含め「次回のiPhoneは更新サイクルが3年まで延びる。これが今後続くのか、あるいは1回だけなのかはわからない」というコメントが多く見られるが、Appleはすでに「iPhoneの○年更新」という概念を止めて「新製品のリリース時期は不定期」という形にシフトしようとしているのではないかと筆者は考える。ここ数年ほど「9月に新製品発表を行って9~11月に徐々に各国で出荷を開始する」というサイクルが続いており、Appleの会計年度で第1四半期(10~12月期)の業績を大きく押し上げるという形で、新製品の購入タイミングを測るユーザーの目にも、業績動向を観察する投資家の目にも非常に分かりやすかった。

ただ、iPhone SEが今春にリリースされたように、「iPhone新製品は必ず秋に登場する」というわけでもなさそうだ。そして、2年サイクルの終了や投入タイミングの不定期化にともなって、ユーザーと投資家ともにAppleの動向を予測するのは今後さらに難しくなるだろう。