ソニーはどんなロボットを作るのか

続いて、AI・ロボットについて触れた平井氏。ソニーは2016年5月に米AI企業のCogitai(コジタイ)社へ出資を発表していた。Cogitaiとソニーは「自らが経験から自律的かつ継続的に学び、より広範の領域に適応可能な人工知能」の開発を目指す。実は提携に先がけて、2016年4月、AI・ロボットを事業化するための組織を社内に立ち上げているという。

平井氏のほか、ソニー 代表執行役 副社長 兼 CFO 吉田憲一郎氏(写真左)と執行役 副社長 鈴木智行氏(写真右)が質疑応答に応じた

ソニーがロボットを作るのは、犬型ロボット「AIBO」以来のこと。再参入というかたちになる。2006年、AIBOが生産終了の憂き目をみたのは、ソニーのエレクトロニクス事業を立て直すため。AIBO事業は当時、"不採算事業"という判断が下された。

今回検討しているロボットについて具体的な話は出なかったが、開発しているもののひとつは「お客様と心のつながりを持ち、育てる喜び、愛情の対象となりうるようなロボット」(平井氏)だという。ロボット掃除機など「生活に直接的に役立つ」ものではなく、シャープの「RoBoHoN」やソフトバンクの「Pepper」といったロボットたちと同じようなジャンルとなるのだろうか。「感動」を重視するソニーらしい選択だ。

しかし、AIBOの反省もあってか、「将来的には、製造工程や物流といった広範な領域での事業展開も検討」(平井氏)と付け加えた。単にAIを搭載したプロダクトを作るだけでは終わらない、という意気込みのあらわれとも受け取れる。

ハードウェアを重視

VRとAI・ロボットを今後の注力分野に据えたソニー。今後、どんなVRシステム、あるいはロボットが飛び出すのか。残念ながら、詳細な計画は明かされなかった。

平井氏は「ハードウェアこそソニーの新しい成長の源泉」と述べた。ハードウェアはユーザーとの接点であり、もっとも近いところで感性に訴えかけるものだからである。そうした意味で「ラスト・ワン・インチ」というテーマを掲げる。物流業界などでよくいわれる「ラスト・ワン・マイル」をもじったもので、"最後の1インチ"でユーザーに新たな価値を提案することを目指すという意味だ。

「Last One Inch」が今後のテーマ

「感動とリカーリング型ビジネスの追求」をミッションとして掲げる平井氏。リカーリング型ビジネス(特定のユーザーと継続的に付き合っていくビジネス)は持続的な収益を得るために重要な考えだ。リカーリング型ビジネスを追求し、VR、そしてAI・ロボットでソニーが収益を得るには、ソフトウェアもきわめて重要になってくるのではないだろうか。平井氏はSCEI(ソニー・コンピュータエンタテインメント。現在のソニー・インタラクティブエンタテインメント)のトップを務めた人物。その重要性も十分わかっているはずだ。