AK 70は、2015年5月に発売された「AK Jr」の後継となるハイレゾデジタルオーディオプレーヤー。ハイパフォーマンスと小型化という製品コンセプトを保ちつつ、DACを見直すなど細部をリファインしたという。Astell&KernブランドのDAPではローエンドモデルに位置付けられるが、OSは第2世代機から採用されたAndroid OSベースのものに変更、無線LANのサポートもありDLNA機能「AK Connect」に対応するなど、機能面では上位モデルに追いついた感がある。

AK Jrの後継機「AK 70」。米国での価格は599ドル

DACにはシーラス・ロジックの「CS4398」をシングル構成で採用。PCMは192kHz/24bitまで、DSDは5.6MHzまでの再生に対応する。ネイティブ再生は最大192kHz/24bitという意味ではAK Jrと変わらず、DSDもPCM変換となるが、DACに採用されたCS4398は「AK240」など第2世代の上位機と同じであり、音質面でのグレードアップが期待できる。

2.5mm/4極のバランス出力端子を装備したことも大きな変化だ。AK Jrではバランス出力に対応しないことが第2世代機と比較したときのウイークポイントとなっていたが、これでその問題は解消された。やや厚みが増したもののじゅうぶんコンパクトであり、バランス接続にこだわるユーザーにはサブ機としても訴求できそうだ。

USBオーディオ出力のサポートにも注目したい。本体下部のUSB micro-B端子を利用し、USB DACにデジタル出力できるのだ。PCMは最大384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで(伝送はDoP)となるが、異なる個性・異なる性能のDACを積んだポータブルアンプ・USB DACで聴く楽しみが生まれた。なお、USB Audio入力(USB DACとしての動作)も可能で、その場合は最大96kHz/24bitの再生に対応する。

USBオーディオ出力に対応。USB DACとつなげばPCM 384kHz/32bit、DSD 5.6MHzを出力できる

エントリーモデルながら2.5mm/4極バランス出力端子を装備。ヘッドホンの選択肢が広がった

DAPでUSB DACを使うことには異論もあるだろうが、内蔵メモリやmicroSDに保存した楽曲を他のデバイスで(当然違う印象の音で)楽しめるのだから、歓迎されていい新機能だといえる。なお、「AK380」などの第3世代、「AK240」「AK100II」など第2世代の機種も、後日のファームウェアアップデートにより同機能をサポートすることも発表された。トップメニューのアートワーク拡大表示機能とあわせ、既存のAKユーザにとっては朗報だろう。

無線LANに対応。OSがAndroid OSベースに変わったことにより、DLNA機能「AK Connect」もサポートされた

他のAKシリーズ製品に先立ち、トップメニューではアートワークの拡大表示が可能になっている

AK 70の音だが、DACなど仕様が大幅に異なるAK Jrはもちろん、同じDACを搭載するAK100IIなど第2世代機ともキャラクターが違う。特に、低域の音圧や解像感といった駆動力に起因する部分は、最新モデルということもあってかAK 70のほうがインパクトは強い。CS4398チップはこんな緻密な音だったか、と思うほど解像感もある。バランス出力は試していないが、期待してよさそうだ。

製品コンセプトは「MUSIC FRIEND IN MY POCKET」であり、ポータブル用途がメインという位置付けだが、個人的には少々疑問だ。アプリ「AK Connect」を利用してNASの音源を聴いたり、コンポーネントのUSB DACに接続してバッテリーを気にせず長時間再生したり、「MUSIC FRIEND IN MY ROOM」という表現が相応しい使い方ばかり頭に浮かんでしまう。ともあれ、599ドル(日本での価格は未定)という価格設定もあり、Astell&KernブランドのDAPにおけるボリュームモデルになることは確実だろう。そしてそれだけの実力を有していることも確かだ。