Hewlett Packard Enterprise(HPE)が2015年末に発表した業界初のコンポーザブルインフラ「HPE Synergy」—- これまでのハイパーコンバージド/コンバージドインフラとはどのように違うのか? HPEが6月、米ラスベガスで開催した自社イベント「HPE Discover 2016」でHPEのコンバージドデータセンターインフラ Blade System & Synergy担当バイスプレジデント、Neil MacDonald氏がセッションで4つのキーワードで説明した。

HPEのNeil MacDonald氏

4つのキーワードとは、1)体験、2)2つの運用モデル、3)3つの設計基本、4)4つのITへのメリットだ。ここでは、Synergyを技術的に説明する3)を中心に見てみよう。

3つの設計基本とは、流動的なリソースのプール、ソフトウェア定義インテリジェンス、ユニファイドAPIだ。

流動的なリソースのプールでは、コンポーザブルコンピュート、コンポーザブルストレージ、コンポーザブルファブリックが単一のコンポーザブルリソースとしてプールされる。ここは、仮想化専用だったコンバージド/ハイパーコンバージドとの違いとなる。このプールをソフトウェア定義インテリジェンスでラッピングすることで、開発者が要件を記述するとインフラがリソースを組み合わせてこの要件を満たすシステムを構築してくれる。 「単一行のコードでインフラを変換できる」とMacDonald氏、コードを書くようにインフラを作ることができ、それをx86インフラで実装できる。

HPE Synergyの構成図。クラウドのように迅速にシステムを構築できることから、同社が提唱する”アイディアエコノミー”のエンジンと位置付けている

「VDIが必要ならテンプレートを作り、コンピュート、ストレージ、ファブリックを定義し、これを適用してインフラを構築する。データベースが必要なら別のテンプレートを作り、モバイルアプリ用に新しいテンプレートを作る・・・不要になればリソースを開放する」とMacDonald氏。

同じインフラ上で物理的に実装しているが、クラウドのスピードで高速に柔軟にインフラを動かすことができるという。

コンピュート、ストレージ、ファブリックを定義したテンプレートを構築して、柔軟にインフラを構築できる

OSイメージは「Synergy Image Streamer」を利用し、瞬時にブートイメージをさまざまなコンピュートモジュールにストリームできるもので、ブート可能なイメージのカタログから瞬時にブートイメージを配信できる。実装は「数秒単位」であり、主要なハイパーバイザーよりも高速に実現するという。

ユニファイドAPIはコンポーザブルインフラのインテリジェンスをエクスポーズするもので、すべてのリソースの設定、ライフサイクルを通じた管理が可能になる。MacDonald氏はこれを「クラウドのようにシンプルな、プライベートのベアメタルのクラウドインタフェース」と形容、「インフラはプログラマブルになるべきだ」とHPEのアプローチを示した。

仮想化(Hyper-V、VMwareなど)、IT管理(OpenStack、SUSE、Ruby on Rails、Pythonなど)、開発(Docker、Chef、Ansible、HPE Helionなど)といったツールや言語と容易に統合できるため、「既存の環境とDevOps環境をシームレスに統合し、典型的なプロビジョニング作業を削減できる」とメリットを説明する。

さまざまなツールや言語から容易にアクセスできる

Synergyはアプリケーションは既存のアプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションの両方で利用できるーーこれが2)の運用モデルとなる。

このような技術的特徴により、ITは柔軟にインフラをコンポーズ(組み立て)できるというこれまでにないバリューを瞬時に継続的に得られる(1)の体験)。4つのメリットとは、コストの削減、クラウドの速度での実装、運用のシンプル化、アプリの実装数の増加となる。

Synergyははまだ一般提供されておらず、約100社の顧客が実験導入している段階だ。だが、「HPE ConvergedSystem」、サーバの「HPE ProLiant DL」「HPE BladeSystem」、オールフラッシュの「HPE 3PAR」など既存の技術を、統合管理基盤「HPE OneView」で管理することでコンポーザブルに向けた作業ができるとMacDonald氏は呼びかけた。