米Appleは6月13日(米国時間)、開発者向け会議「WWDC 2016」の基調講演において、次期iOS「iOS 10」の発表を行った。この中で紹介された新機能のうち、本稿では「Homekit」について詳しく紹介する。日本ではまだ対応製品がほとんど出ておらず、国内での普及にはもう少し時間がかかりそうなスマートホーム機能だが、iOS 10では使い勝手が大幅に改善され、対応する家電の種類も増加している。
統合インタフェース「Home」登場
「Homekit」は、Appleが提唱するスマート家電用のプラットフォームだ。HomeKitに対応した機器は、iOS側が用意したインタフェースを使って制御したり、機器同士をグループ化して一括でオン・オフしたりできる。HomekitそのものはiOS 9から搭載されているのだが、ユーザーインタフェース自体は機器ごとのアプリに依存する形で、使いづらさが指摘されていた。
iOS 10ではHomekit対応アプリの統合コントローラーとして「Home」アプリが用意される。このアプリの中でHomekit対応機器をすべて管理できるようになっており、ようやくユーザーが混乱せずに利用できる環境が整いそうだ。
特に「朝」や「就寝時」などシチュエーションごとに機器をグループ化して状態をセッティングしておけるので、ボタンひとつで理想の状態に保てる。Homekitで制御できる家電の種類も増えており、より多くのジャンルでの対応製品が期待できる。
さらに発動トリガーとしてジオフェンス(仮想境界線)を利用できるようになり、「自宅近くまで帰ってきたら車庫のシャッターが上がり、家の電気がついてエアコンの温度設定が変わり、家の鍵が開く」といったフルオートな家も夢ではなくなっている。なお、外出先からの制御には、自宅にApple TVが必要だ。
対応が待たれる日本メーカー
スマート家電用の制御規格としてはGoogleの「Weave」がある。Googleはスマートサーモスタット企業の「Nest」を買収したり、家庭内でNestなどと連動できる音声アシスタント「Google Home」を発表するなど、スマート家電事業に力を入れている。家庭内のIoTにおいてもAppleとの勢力争いが激化しているわけだ。発表時期の速さや実際の対応製品という点ではHomekitがまだ少しだけリードしている状況であり、iOS 10のHomekitの改良は、ユーザビリティの改善というだけでなく、規格同士の争いを勝ち抜くための改善の意味があるわけだ。
なお、Homekitの対応メーカーとして紹介されたのは米国と中国の企業ばかりであり、かつて家電王国だった日本のメーカーはまったく姿が見えないという残念な状況だ。日本では、各社が独自にスマート家電を開発したり、住宅会社などがスマート住宅の規格策定を進めているのはわかっているが、国内での共通規格すら出ていない状況ではまったく世界と競争できない。オン・オフ程度の基本的な機能だけでもいいので、独自路線から早く手を引いて、Homekitなり、Weaveに対応した製品を投入してもらいたい。