IntelのThunderbolt 3の発表から1年、ここにきて、ノートPCを中心にThunderbolt 3の実装が、じわじわと増えつつある。Intelは、COMPUTEX Taipei 2016期間中に記者説明会を開き、Thunderboltの現状と今後の展望を明らかにした。

同記者説明会に登壇したJason Ziller氏(Marketing Director, CCD、 Client Computing Group)は、「すでに60以上のPCがThunderboltを採用しており、2016年のPCのリフレッシュ時には、より多くのThunderbolt対応PCが登場する」として、Thunderbolt対応PCが急速に増えつつある現状を紹介。

Thunderbolt 3の最新動向を説明するJason Ziller氏

すでに60以上のPCがThunderbolt 3対応を果たしているとアピール

また、Thunderbolt 3対応デバイスについても、現在20製品が発表済みだが、さらに65製品が開発中であるとして、周辺機器も年内に充実していくという見方を示す。

Thunderbolt 3デバイスは、まだ20製品と少ないが、現在65製品が開発中だという

この急速な浸透を見せるThunderbolt 3は、これまでのThundeboltやThunderbolt 2とは異なる性格を持つ。当初、Thunderboltは、シングルケーブルでPCI Express x4とDisplay Portの両方の信号を伝達できるインターフェースとして登場、Thunderbolt 2ではPCI Express 2.0への対応を果たし、より高速なデータ転送をサポートした。

しかし、2015年に発表されたThunderbolt 3は、コネクタ形状をminiDPからUSB Type-Cへと変更し、PCI Express 3.0への対応を果たすだけでなく、USB 3.1ホストコントローラも統合するほか、さらに最大100Wの充電と際だ15Wの給電をサポートするUSB Power Deliveryにも対応するようになった。

Thunderbolt 3は、これまでのPCI ExpressとDisplayPortに加え、USB 3.1 Gen.2も統合。また、USB PowerDeliveryにも対応する。これを受けてコネクタ形状もUSB Type-Cへと変更された

Thunderbolt 3のブロックダイヤグラム(IDF 15の資料から抜粋)

すなわち、現在唯一のThunderbolt 3コントローラであるAlpine Ridgeは、用途に応じて、USB 3.1、PCI Express 3.0、Display Port 1.2そしてThunderboltの4つのプロトコルを一つのケーブルで伝送できる、汎用性の高いコントローラに生まれ変わったこととなる。

Thunderbolt 3の帯域はTuhnderbolt 2の倍となる40Gbpsに達する

Thunderbolt 3では、シングルケーブルでDisplayPort 1.2の2ストリームをサポートし、2台の4Kディスプレイで60Hz表示をサポートする

Thunderbolt 3はUSB PowerDeliveryに対応し、標準で15Wの給電をサポートするほか、オプションでバッテリ充電用に100Wの給電も可能

汎用性の高さと転送速度を生かして外付けGPUユニットの開発が加速

この汎用性の高さは、ノートPC用の外付けグラフィックスユニット開発を加速することになった。すでに、RazerがThunderbolt 3を採用した外付けグラフィックスユニット「Razer Core」をIntelおよびAMDとの協力のもと開発、製品化に成功しており、他のメーカーもこれに追随する。

Thunderboltの汎用性と帯域の広さを活かし、ディスプレイ出力やUSB 3.1 Gen.2、LANなどを統合したドッキングステーションを用意するベンダーも多い

ただし、ノートPCベンダー関係者は「Thunderboltプロトコルで外付けグラフィックスを実現すると、ドライバのレイヤーがGPUから遠くなり、パフォーマンスに数%のペナルティが生じる」と説明する。そこで、一部のベンダーは、データ転送にはThunderbolt 3の技術を活かしつつも、デバイスレベルとしてはGPUをPCI Express接続と認識されるようにすることでパフォーマンス問題をクリアにする手法を採っている。

2016年のCOMPUTEX TAIPEIで多くのPCベンダーがThunderbolt接続による外付けグラフィックスアダプタやドッキングステーションを展示。これも、PCI Express 3.0 x4のフル帯域をサポートできるThunderbolt 3の特性を活かした結果だ

実際、ASUSTeK Computerが開発したGeForce GTX 1080を搭載可能な外付けグラフィックスボックス「ROG XG STATION 2」では、Thunderbolt 3のほかに“proprietary port”を用意して、PCI Expressネイティブ接続で最大15%のパフォーマンスアップが可能としている。

Razerの外付けグラフィックスボックス「Razer Core」

AcerのGraphics Dockは、GeForce GTX 960Mを内蔵し、USB 3.1やLANポート、DisplayPort出力などを備える

AcerのGraphics Dockを利用した4K 2画面出力のデモ

ASUSTeK ComputerのROG XG STATION 2は、proprietary portを利用して最大15%のパフォーマンスアップをサポートすると言う

2016年もGIGABYTEはAlpine RidgeをUSB 3.1コントローラに採用したマザーボードを多数展示

Thunderbolt 3対応の製品に力を入れ、周辺機器のラインナップ拡充も計画中だ

外付けグラフィックスボックスは縦に長いデザインを採用する

USB以外でも採用される「USB Type-Cコネクタ」

その一方で、USB Type-Cコネクタを、USB以外で用いる動きも拡大している。すでに、一部ノートPCやディスプレイが、USB Type-Cコネクタを「DisplayPort over USB Type-C」で利用する。

例えばDellのInspiron 15 7000シリーズや同 13 5000シリーズの最新モデルなどでは、同規格を正式サポートしており、USB 3.1、Thunderbolt 3そしてDisplayPortが同じコネクタを使いながら、ケーブルに対する要求条件は異なるという状況になってきている。

DisplayPortもUSB Type-Cコネクタの利用を加速する。写真は、Dell Inspiron 15 7000シリーズのUSB Type-Cコネクタ。横にDisplayPortのロゴが確認できる

そこで、Ziller氏はThunderbolt 3対応ケーブルに関するアップデートも公開。現在、市場には最大20Gbpsまでの対応となる従来のThunderboltケーブルと、Thunderbolt 3対応の40Gbps対応ケーブルが混在しているが、これらを分かりやすくするために、Thunderbolt 3対応ケーブルには、コネクタ部にThunderboltロゴと「3」も文字を刻印するように変更するという。

40Gbpsのデータ転送をサポートするThunderbolt 3対応ケーブルには、Thunderboltロゴに加え「3」の文字が追加される

Thunderbolt 3のロゴがプリントされたケーブル

また、価格をUSB 3.1ケーブルなみに抑えた低価格ケーブルの投入や、現在最長50cmしかない40Gbps対応ケーブルの長さを、信号増幅のためのICを内蔵したアクティブタイプにすることで2mまで延ばす計画も明らかにした。さらに、同氏は40Gbpsの転送速度を活かして、ネットワーク接続や4Kビデオデータの転送、U.2などの最新高速ストレージのサポートにもThunderbolt 3の技術が活かせるとして、より多くのPCに同規格をサポートしてほしいとアピールした。

現在のThunderboltのType-Cケーブルは、USB 3.1およびDisplayPortもサポートするが、ケーブル長は50cm以下に限られる。また、信号増幅用ICを搭載したアクティブタイプも開発中で2mの長さを実現可能だが、DisplayPortには利用できない

第7世代Coreプロセッサを採用するPCやマザーボードでは、Thunderbolt 3の採用が倍になると予測。また、12以上の外付けグラフィックスデバイスが年内に投入予定だと言う

HPのThunderbolt 3対応モバイルドッグを使い、Intel SSD 750のデータ読み出しテストを実施。Thunderbolt 3ならば2.4GB/sのシーケンシャルリード性能を引き出せるとアピール

PC同士をピア・ツー・ピアで接続し、データ交換などのネットワーク用途に使うことも、Thunderbolt 3の帯域を活かす方法の一つだと紹介

ディスプレイ変換アダプタや10Gbpsネットワークアダプタ、NVMe SSDなど、Thunderbolt 3対応デバイスは、今後大幅にバリエーションを増やしていく見通しだ