米携帯キャリアはバンドル販売や契約縛りを強化

もう1つ興味深いのは、携帯キャリアがバンドル販売や契約縛りを強化しているトレンドだ。かつては米国で始まり、日本でもソフトバンクを通じて一般的となった「2年契約縛り」という商習慣だが、携帯キャリアが「販売奨励金(Subsidy)」を名目に、ユーザーの携帯端末購入に2年契約を条件に補助金を出すことで、安価に端末をバラ撒いて新規顧客を獲得しつつ、既存顧客をつなぎ止めるという一石二鳥の方式だ。

だが、年々上昇する端末価格と顧客の増加により、携帯キャリアにとって、販売奨励金の負担はばかにならず、AT&Tが2015年前半に撤退したのを最後に、米国では基本的に2年契約縛りの契約スタイルは消滅した。代わりに登場したのは「AT&T Next」のように、端末を割賦販売するだけでなく、1年継続利用など一定条件を満たせば分割支払いを完了しなくても新端末購入が可能になる「永続縛り」プランで、似たような仕組みは現在AppleもiPhoneで適用しつつある。2年縛り亡き後、他キャリアや他端末への流出を防止するのが狙いの仕組みだ。

バンドル販売とは、他の付随サービスを携帯のポストペイド契約とともに割引販売で提供する仕組みで、付随させるサービス内容によっては解約が難しく、かつサービスのセット販売で売上上昇も見込めるという両得の方法となっている。日本では光回線とのバンドルが比較的昔から一般的だったが、最近では保険や各種ローン、電気とのバンドルも登場し、キャリビジネスの横展開の好例となっている。

米国では、例えばAT&Tが買収した衛星放送の「DirecTV」とのバンドルが話題になっている。DirecTV契約時にはサービス割り引きがあるだけでなく、AT&Tの携帯回線でデータ通信の無制限プラン加入が可能になるというオマケ付きだ。最近ではAT&T回線を持っている筆者のメールボックスにも毎月のようにプロモーションのDMが届いており、いかに販売強化を行っているかがうかがえる。

新規契約ユーザーの伸びの鈍化や解約率増加に悩まされる米携帯キャリアは、あの手この手で引き留め策を模索。米AT&Tは、2014年に傘下に収めた衛星TV会社のDirecTVとの共同キャンペーンで、DirecTV契約のAT&Tモバイルユーザーには無制限データプランを提供。1月あたり上限22GBの条件がつくサービスを「無制限」と表現するのはいささか疑問だが、家族契約でのシェアプランを併用すれば月々の利用料を安く抑え込める

こうした背景もあり、現在筆者が契約しているAT&Tアカウントのメールボックスには、毎月のようにDirecTV契約のキャンペーンDMが送信されてくる。日本でも光回線などとのバンドル強化を携帯キャリア各社は進めているが、これは米国でも変わらない

変わるトレンドにどう対応するか

ようやく止血が終わり、徐々にテコ入れ効果が見えつつあるスプリントの業績だが、反転といくまでにはまだもう少し時間がかかりそうだというのが筆者の予測だ。特に、同社が目指すことになるとみられるT-MobileやAT&Tは、トレンドの先を進んでおり、今後2020年までの5Gへの投資を考えれば、かなり長い道のりであることがわかる。

スプリントの問題は治療されつつあるが、V字回復といくにはまだ時間がかかるか。孫氏の1~2年後の発言や動向に注目

孫氏は設備や端末の調達面での優位を強調するが、おそらくソフトバンクによるスプリントの買収効果は経営見直し以外の部分で、まだあまり効果を上げていないのではないだろうか。各社のサービスが横並びになりつつあるなかで、日本を地盤にしてアジア方面に強いソフトバンクと一緒になったというプラスαの部分をきちんと打ち出しつつ、スプリントならではのサービス面での特徴を出してほしいところだ。