NTTドコモはモバイル通信会社――。そうしたイメージが近い将来、大きく変化するかもしれない。2015年度決算会見の場で繰り返し出てきたのは、伸び代の大きな新領域に寄せる期待の言葉。期待の向け先は通信事業とは別のところにあるのだ。
主力ながら環境厳しい通信事業
ドコモの主力事業は通信だ。2015年度の営業収益は4兆5,270億、営業利益は7,830億円。このうち通信事業の営業収益は3兆6,898億円で全体の81%、営業利益は7,089億円で全体の90%と収益・利益の大多数を占めている。
しかし、近年の通信事業は振るわない。2013年度決算を境に、2014年度は減収・減益、2015年度は盛り返したものの、完全回復までは至っていない。このようになった理由は、2014年6月にスタートした新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」で躓いたからだ。
「カケホーダイ&パケあえる」は、音声通話が定額で、データ通信量を任意に選べるのがウリのプラン。利用者の契約数の推移、契約形態によって、通信事業の業績を大きく左右するが、それが裏目に出てしまったのだ。
ドコモの加藤薫社長は「新料金プランの契約者数がサービス開始1カ月間で470万契約に達した。当初はだいたい50万契約くらいだろうと思っていた。それが外れた。データ通信も安いプラン(2GB)に集中してしまった」と振り返る。
2015年度決算では、コストダウン、ドコモショップの営業努力などがあり、通信事業はかなり回復したが、今後の収益回復に向けては、外部環境を見ても明るい材料は乏しい。それが今、ドコモの通信事業が置かれた環境だ。
今に限ったことではないが、携帯電話が普及しきったことで、新規契約者の大幅な増加は望めない。足元を見ても、MVNO(仮想移動体通信事業者)が台頭してきており、昨年9月から議論が進んできた携帯電話料金の値下げ問題を受け、総務省は料金の安いMVNOへの移行を後押しする流れを生み出そうとしている。このように、通信事業をいろいろと見回しても、明るい材料は見当たらないのだ。