吉田史絵さんはこの4月で入社14年目。ソリューションのコンサルタントをしている。役職は、主任だ。6年前に双子を出産して以来、2度目の長期休暇になる。0歳児から2歳児までを預かる小規模保育に子どもを預けることが決まったが、「2歳までなので、3歳までにどこかの保育園に入れたいと思っている。入れなかったら幼稚園という選択肢も考えている」と話す。

吉田史絵さん

復職のために外部の助っ人を準備

「以前復職した時は、どんなに大変か分かっていなかった」と吉田さん。復職後にどうやって育児と業務を両立したらいいのか、復職セミナーでは、専門家から具体的なアドバイスもあった。吉田さんはセミナー後、自動で動く掃除機など最新家電を買ったり、区の子育て支援サポートに登録したりしたという。「1つの方法に頼るだけでなくて、多方面で外の力を積極的に利用して、何かあっても休まなくていいようにしたい。その方が気分的にも安心」と話す。取材した時は、これから家事のサポート先を探すとのことだった。

主任以上の女性社員全員対象とする個別育成計画書

日立ソリューションズでは、吉田さんのような主任以上の女性社員全員の個別育成計画書を所属長と人事部門で作成している。「ほとんどの場合、本人は知らないですが、この人には今年度はこんな研修を受けさせようとか、こんな仕事をさせようとか決めている」と小嶋さん。

厚生労働省HPの「女性の活躍推進企業データベース」などに公開されている日立ソリューションズの企業データによると、正社員は全体で5122人、その中で女性は736人。計画書の対象となるのは主任以上なので、147人になる(2015年4月1日現在)。若年層の女性比率が高いので今後計画書の対象が増えていき、大多数の女性社員の個別育成計画書が作られることが想定される。こうまでして活躍支援を進めるということは、本気度が高いといえよう。

「女性社員は使い捨てのリソースではありません。会社の資産なので価値を高め、利益に貢献できるようにしないとならない。だから本人の思いとは違うかもしれないけれども、会社は計画書を作っています」(小嶋さん)という。

対象になっている吉田さんは、職場の上司とはすでに面談をしていて、復職後の仕事の内容や役割が決まっている。「2回目なのでなんとなく想像できる。うまくやれるかなと思う」。また今後のキャリアについては、「無理しすぎないで、でもちょっと背伸びをすることもやりたいと思っている。自分らしく楽しく仕事ができる人になりたい」と語った。

足掛け10年 日立ソリューションズの取り組み

2010年に日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスの合併により誕生した日立ソリューションズだが、前身の2社とも2006年からダイバーシティの啓蒙啓発を進めていた。その下地があったので、日立ソリューションズが誕生した2010年度はダイバーシティの認知の年としてスタートでき、11、12年度は仕事と家庭を両立する社員に対する支援体制の整備の年として進めてきた。その結果13年度には、厚労省から「均等・両立推進企業表彰」を受賞。14年度は、実際に現場で女性が活躍できるようにという点を重視し、今やっと結果が出始めたという。

「本当にゼロベースの取り組みだったら、こんなにはできなかった」(小嶋さん)。女性の復職者が増え、管理職の中でも2、3割を占めるという。「育児と両立することと活躍することが二律背反のものではない事例が増えてきた」と手ごたえを感じている。20年までに管理職に占める女性の割合を40歳以下は30%、45歳以下は20%、全体では10%にすることが目標。今後は、ダイバーシティマネジメントに関する管理職の意識改革や、柔軟な働き方の浸透といった残りの課題に対し継続して改善を進めるそうだ。