これは筆者の感覚だが、一昔前、ワインといえば特別な料理を味わったり、何かを記念したりする際に飲むアルコール飲料だった。リカーショップで購入したワインのビンを大事に抱えて家路を急ぎ、コルクスクリューで慎重に栓を抜く……。明らかにビールや焼酎を飲む場合と心構えが違っていた。だが今は気軽にコンビニでワインを購入し、特に身構えることもなく飲むようになった。“デイリーワイン”という言葉を頻繁に聞くようになったが、筆者もこの飲酒スタイルにすっかり馴染んでしまっているようだ。

このデイリーワインが功を奏してか、“第7次ワインブーム”が日本の酒市場で渦巻いている。2008年のリーマン・ショックの影響でワインの消費量はいったん減少するが、以降は7年連続で消費量が増加。“ポリフェノール”が話題となった第6次ワインブーム(1998年)の消費量を2013年に突破し、2014年、2015年も伸び続け過去最高を続伸している。

“王者”フランス産を抜いたチリ産ワイン

この第7次ワインブームの牽引役が安価な輸入ワインだ。なかでも突出して輸入量を増やしているのがチリ産ワイン。2007年に発効した経済連携協定(EPA)により関税が低減され、ここ10年間で約7倍と爆発的に輸入量が増えている。2015年には、輸入ワインの“絶対的王者”ともいえるフランス産を抜き、ついにチリ産が輸入量でトップに立ったことをみても驚異的な伸びだ。

このチリ産ワインのあとに続きそうな気配をみせているのがオーストラリア産ワインだろう。2015年1月に日本とのEPAが発効し、関税低減による販売単価の低下が見込まれる。加えてオーストラリア大陸の南側はワイン用ブドウの栽培に最適な気候で、数多くのワイナリーが存在。ワインに関する国の研究機関・教育機関も充実しており、輸出産業としてワイン醸造に力を入れている。オーストラリア産ワインの日本への輸入量はチリ産、フランス産、イタリア産、スペイン産、アメリカ産に次ぐが、2014年のオーストラリアのワイン生産量はチリを上回っており、品質の面でも世界のワイン通から一定の評価を得ている。