LINEは24日、ジェーシービー(JCB)と提携したプリペイドカード「LINE Payカード」、およびポイントサービス「LINE ポイント」を発表し、同日より発行および提供を開始している。LINEの狙いはどこにあるのだろうか。本稿では、そのあたりを考察してみたい。

LINEでは、JCBと提携したプリペイドカード「LINE Payカード」、およびポイントサービス「LINE ポイント」を開始する

「LINE Payカード」は、国内960万店、海外2,000万店のJCB加盟店で利用できる入会金・年会費無料のプリペイドカード。LINEアプリから残高管理や利用履歴の閲覧が行えるのが特徴だ。発表会に登壇したLINE 取締役CSMOの舛田淳氏は「オンラインではLINE Payで、オフラインではLINE Payカードでお買い物が楽しめる」とアピールした。

国内外約3,000万店のJCB加盟店で利用できる「LINE Payカード」。カードデザインはブラウン、ブラック、ホワイト、カラフルの4種類が用意されている

また「LINE ポイント」は、「LINE Payカード」を介した買い物やインターネットの各種サービスなどの支払い時、100円につき2ポイントが付与されるポイントサービス。貯まったポイントは1ポイント=1円としてLINE STOREなどで使えるほか、電子マネーとしてLINE Payに交換することも可能。舛田氏は「他社サービスと比較しても高い、2%という還元率を実現した。現金との交換もできる魅力的なサービスとなっている」と今後の展開に自信をのぞかせた。

「LINE Payカード」を介した買い物やインターネットの各種サービスなどの支払い時、100円につき2ポイントが付与される「LINE ポイント」

今後「LINE ポイント」では「LINE コイン」との交換に対応するほか、Amazonギフト券、nanacoポイント、Pontaポイント、WAONポイントといった各種提携先のポイントプログラムへの交換も視野に入れている。

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LINEでは、どういった世代を「LINE Payカード」のターゲット層に見込んでいるのだろうか。発表会後の囲み取材で、舛田氏は「まずは普段からリアルの店舗でショッピングをしている主婦層に使ってほしい」との見方を示した。その上で、「上限の金額が設定できるので”お小遣いカード”のような形でも利用していただける」と付け加えた。例えば親が子どもに月の小遣いをあげる際、LINE Payカードに入金する形をとることで、現金を手で渡すよりも金銭の管理がより良く行えるとの見立てだ。

そもそも「LINE Payカード」にクレジットカードの機能を搭載しなかったのも、年齢制限や審査の必要なくカードを発行させたかったからだろう。これまでクレジットカードを持てなかった層に広く「LINE Payカード」を普及させていくことで、実現できるのは「LINE Pay」そのものの認知度の向上である。このLINEの思惑は当たるだろうか。

年齢制限や審査の必要なく発行できる「LINE Payカード」。利用者層に広く普及させていくことはできるだろうか

競合他社のサービスを例に考えてみたい。カードの発行とポイントとの連携サービスには例えば、先行するKDDIの「au WALLET Market」がある。KDDIでは同サービスの開始にあたり、コストを度外視した大規模なキャッシュバックキャンペーンなどを展開していた。しかし今後はいかに黒字化させていくかに苦心している。この大手通信キャリアの先例から分かることは、一般消費者の日常生活には、まだカードによる決済方法が浸透していないという事実である。「LINE Payカード」の開始により、果たして”LINE Pay経済圏”は拡大できるだろうか。道のりは決して甘くない。

100以上のプロジェクトを動かし、3か月に1回のサイクルで事業を見直しているというLINE。サービスを継続するか否かの経営判断が速く、直近ではフードデリバリーアプリ「LINE WOW」、フリーマーケットアプリ「LINE MALL」などを閉鎖している。いわば慎重な経営をしてきた同社が、ここにきて「LINE Pay」、「LINE ポイント」、そして「LINE MOBILE」といった、いずれも長期的な運営が求められる施策を立て続けに発表したことは興味深い。今後の経営手腕に大いに注目したい。