いまや4人に1人がかかっているといわれる花粉症。その原因としてもっともメジャーなのがスギ花粉だ。それもそのはず、日本の森林面積2,508万haのうち、448万haとぶっちぎりの約18%をスギ人工林が占めている。

花粉症の人から忌み嫌われるスギだが、生長が早く、また加工しやすいことなどから、木材資源として重宝されてきた。戦後の拡大造林政策でスギの植林が推奨されたことも手伝って、現在の"国民病"が生み出されたとされる。スギ花粉症の人からしてみれば、「とにかく花粉をばらまくスギをすべて伐採してくれ!」という思いだろうが、そう簡単にはいかない事情があるようだ。

花粉症患者にはツライ時期が到来(写真:PIXTA)

木材自給率の低さ

人工林でもっとも多い樹種はスギ(出典:林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題」)

さて、日本の森林率は約66%と、世界でもトップクラスだというのをご存知だろうか。森林率が高いにもかかわらず、木材の自給率は2014年で31.2%(2014年から追加した木材チップを除くと29.6%)。残りの約7割は輸入木材ということになるが、これでも自給率は上がったほうで、30%台を回復したのは実に26年ぶりとのこと(データは林野庁「木材需給表」を参照)。

森林率が高いわりに自給率が低い背景には、1960年代の木材輸入全面自由化とそれ以降の円高進行がある。きわめて簡潔にいえば、自由化の後、外国産の木材が主流となり、さらにこれらが円高によって安くなってしまったことで、国産材まで価格が下落。こうして林業は打撃を受けた。伐採しても再び植林する資金を回収できず、放置するしかない……という人工林が多いのが現状だ。

左は国土面積と森林面積の内訳。日本の森林率は世界でもトップクラス。右は木材の供給率の推移。2002年に自給率最低を記録したが、徐々に持ち直してきている(出典:林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題」)

冒頭でも触れたが、スギは育てやすくて生長も早い。木材としての利用価値が高いのだ。花粉が一部のヒトにとってはアレルゲンとなる、という点さえ除けば、ほとんどパーフェクトな木に思える。