モダニティは3月10日、スウェーデンEARIN社の世界最小級Bluetoothイヤホン「EARIN」について説明会を開催。EARIN社の創業メンバーでありハードウェア設計者のPer Sennstrom氏が、開発秘話や製品のこだわりについてプレゼンテーションを行った。
EARIN社のはじまりは2013年1月。ソニー・エリクソン(現ソニーモバイルコミュニケーションズ)やノキアでスマートフォンの開発に携わっていたKiril Trajkovski氏、Olle Linden氏、Per Sennstrom氏が共同で創設した。今回来日したSennstrom氏は、ハードウェアの設計や、エンジニアチームとの調整役を務めているという。
EARINの開発は、「完璧にフィットする軽量なワイヤレスイヤホンを作りたい」といった非常にシンプルな(EARINそのものともいえる)発想からスタートした。2013年春に最初のコンセプト案を作成したが、「ニーズが合致しない」との理由で失敗。2013年秋に打ち出した第2弾コンセプトをもとに、ハードウェアの開発を開始した。その後、2013年12月に試作品を製作し、2014年5月にクラウドファンディングサイトにて製品を発表する運びとなった。
ベンチャーキャピタルから出資を受けることも考えたが、資金獲得までのスピード感を優先し「Kickstarter」でのクラウドファンディングを決断。最終的に150万ドルの資金を獲得した。クラウドファンディングを行うメリットについてSennstrom氏は、「製品が認められればユーザーからすぐに反応が返ってくる。また、成功すれば製品の注目度を高められる可能性がある」と話す。自社製品への強い自信が、クラウドファンディング実施につながったことがうかがえた。
EARINの具体的な内部機構は非公開となっているが、knowles製のBAドライバー、Bluetooth用チップ、アンテナを実装した基板、充電式のリチウムイオンバッテリー(容量60mAh)で構成していることはオープンになっている。特にポイントとなるのが独自開発のアンテナだ。EARINは左右のユニットにそれぞれアンテナを装備しており、プレーヤーとの通信だけでなく、左右ユニット間の通信もBluetoothで行っている。アンテナの性能は、通信の安定だけでなく音質にも大きくかかわってくるため、設計にはかなり苦労したと話していた。なお、アンテナに関わる技術は特にシークレットにしているようで、特許も取得済み。今後も詳細を明らかにすることはないようだ。開発において大きな壁となったのは、「この小さなきょう体にいかにバッテリーを内蔵するか」だったという。内蔵に成功したことで、EARINはきょう体内部のほとんどをバッテリーが占めることになった。
説明会でたびたび語られたのは、「シンプル」へのこだわりについて。EARINは操作ボタンを徹底的に排除しており、イヤホンを専用ケースから取り出すことで、以前通信したプレーヤーと自動でペアリングを開始する仕様になっている。今後の展望について同社は、EARINでアピールした「ワイヤレスメーカー」としてのポジションを確固たるものにしたいと話す。
記者から通話用マイク搭載の予定について訊かれると、「ノーコメント」としながらも、「開発の手は緩めていない」との回答が。また、ノイズキャンセリング機能を採用した新製品の開発は「考えていない」と話し、Complyチップの遮音性がノイズ低減の役割を充分に果たしているとの見解を示した。