人工知能×自動車が未来の社会を変革する

NTTでは最近、「ロボット開発をどうするんだ」と頻繁に聞かれるようになったという。ソフトバンクの「Pepper」が話題を集めている影響だろう。NTTのロボット開発について、事前説明会に登壇した同社代表取締役副社長の篠原弘道氏は「ハードは協力パートナーから提供してもらい、NTTでは頭脳を提供していく」とのスタンスをあらためて示している。この日の会場でも、ロボットや人工知能とNTTの技術が融合した取り組みがいくつか紹介されていた。

トヨタ自動車の「ぶつからないクルマ」は、未来の運転支援技術。通信技術をNTTが、人工知能をPFN(Preferred Networks社)が担当する。自動車の運転に、人工知能はどう貢献するのだろうか? ブースでは各担当者が技術の”肝”に触れていった。NTTでは、かねてから「エッジコンピューティング」の研究・開発を進めてきた。ユーザーの近くにエッジサーバーを分散させることで、すべての情報をクラウドで処理するケースに比べて、通信の遅延を短縮できる技術だ。これにPNFの研究するAIの技術が掛け合わされた。

トヨタ自動車×PFN×NTTによる「ぶつからないクルマ」のデモの様子。より適切でスピーディーな処理が行えるNTTのエッジコンピューティング技術が活用されている

ぶつからないクルマには、深層強化学習が応用されている。動物のしつけではおなじみの、良い行動をしたら褒め、間違えたら罰を与えることで学習させる方法である。これにより、人工知能を持った”クルマ”は「どうしたら、より褒められる走行ができるか」を試行錯誤で学んでいく。こうして、ぶつからないクルマをつくっていこうというわけだ。

途中で人が操作する赤いラジコンを紛れ込ませたが、人工知能を搭載する他のクルマは、ぶつからないよう器用にラジコンを避けつつ安全運転を継続した

ソフトバンクのPepperでは「集合知」がひとつの特徴となっている。個々のPepperが学んだことがクラウド経由で全国のPepperにも共有されることで、学習のスピードを飛躍的に速めている。同様に、ぶつからないクルマでも「分散強化型」の学習システムが取り入れられた。あるクルマが追突した、などの情報はネットワークを通じて、瞬時に他のクルマに共有される。では、こうした知識を共有しなかったら、どうなるのだろうか。担当者はあくまで予測、と断った上で「ぶつかったことがあるクルマは慎重な運転をするようになり、ぶつかったことがないクルマは無茶な運転をするようになるかもしれない。個性が出てくるのではないか」と持論を展開した。