2015年、フォトシンス、ライナフ、Qrioと国内3社から発売されたスマートロック。登場の背景には、低消費電力のBluetooth Low Energyという技術の普及と、先行販売していた米国の製品が日本で利用できないという事情があった。国産品の発売当初、その目新しさからイノベーター層の購入が目立ったが、2015年末現在、3社とも個人向けではなくビジネス向けに主眼を置いている。スマートロックはどの分野で利用されるのだろうか。

左からフォトシンスの「Akerun」、ライナフの「NinjaLock」、Qrioの「Qrio Smart Lock」

物理的な鍵の制約がなくなったスマートロック

スマートロックの浸透余地を知るには、その特徴を掴む必要がある。最大の特徴は、何といってもスマートフォンで鍵の開閉ができること。鍵がアナログからデジタルになり、鍵の開け閉めにカバンやポケットを探る必要がなくなったが、注目すべきは鍵が"物理的な制約から解放されたこと"だ。

通常、合鍵はまず複製する必要があり、鍵を遠方の人に気軽に渡すことのは難しい。これが鍵をデジタルデータとしてメールやメッセンジャーアプリなどで他者と共有できることで、対面で受け渡す必要や距離の制約がなくなるのだ。

スマートロックの利用例(出典:ライナフホームページより)

このメリットは、まず不動産仲介業で生きてくる。従来、不動産仲介会社は、入居希望者に物件を案内する際、不動産管理会社に出向いて、その物件の鍵を借り受ける必要があり、鍵の受け渡しが大きな手間となっていた。効率化を図り、物件近くにキーボックスを設置しても、セキュリティ面での懸念が拭えなかった。

この点を踏まえて、フォトシンスでは不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営するネクストと共同で実証実験を実施。「Akerun」を賃貸物件の鍵として設置し、専用アプリを通じて、不動産仲介会社と不動産管理会社の間での鍵の受け渡しをネットを介してやりとりする実験で、利用者からは想定どおりの利便性を感じてもらえたという。