後半は、SaaSとPaaSの担当者が製品紹介とともにユーザー企業を壇上に招き、同社が選ばれた理由などを披露した。

SaaS時代に起こる変化とは?

KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部長 山崎雅人氏

SaaSの導入企業としては、KDDI(「Oracle CPQ Cloud」を導入)とバルス(「Oracle EPM Cloud」)の2社が登場した。

KDDIのソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部長 山崎雅人氏はiPhoneなどグローバル標準のスマートフォン普及が進んだ結果、「コモディティ化が進んでおり、グローバルスタンダードの製品にいかに付加価値をつけるかが重要になっている」とビジネス上の課題を挙げる。そこで「プロセス改善を含めて顧客の声をいかにして集約して届けていくのかを高速化させる必要がある」としてCPQ Cloud導入に至ったと述べた。

同社はすでにSFA、CRMを導入していたが、CPQ(Configure、Price、Quote)はSFAを支援し営業の生産性を図るという役割だという。「業務の効率化により、セールスで年10万時間以上のコスト削減を図る。処理ミスも60%程度減るのではと期待している」と山崎氏。

日本オラクル 執行役副社長 クラウド・テクノロジー事業統括 三澤智光氏

日本オラクル 執行役副社長 クラウド・テクノロジー事業統括の三澤智光氏は、SaaSの普及に絡めてPaaSの重要性を説いた。「2025年に新規のアプリケーションでSaaSを活用する割合は85%と言われている。SaaSの完成度は上がり、ラインアップも増えてくるだろう。今から準備をする必要がある」と三澤氏、具体的には「マイクロサービス」という考え方を推進していくという。

「SaaS時代にどのような変化が起こるのか――すべてのアプリケーションがSaaSになることはない。クラウド上で構築するアプリケーションがあれば、オンプレミスで使うアプリケーションもあり、レガシーのものもある。これらすべてをマイクロサービスという形でAPIを使って連携できれば、コストが下がる」と三澤氏は説明する。

開発プラットフォームをサービスとして提供するPaaSを利用することで、SaaSの連携が実現される。例えば、フロントエンドはSalesforce.comを、バックエンドのコールセンターはクラウド型コールセンターシステム「Oracle RightNow Cloud Service」をシームレスに連携して利用するといった事例があるという。「オンプレミスなら半年のプロジェクトだが、OracleのPaaSなどを利用して約1週間で作った」とのことだ。

三澤氏は、「SIが大きく変わる。これからのクラウド時代は一つ一つのサービスがマイクロサービス化されて、それぞれがAPIで制御され、APIをつなぐことでアジリティ(俊敏性)のあるシステムを低コストで構築する」と新しい時代のITを描いてみせた。

オラクルが描く新しいITでは、さまざまなマイクロサービスがAPIで制御され、連携される

クラウド移行の課題は「マインド」と「セキュリティ」

オラクルのPaaSの特徴は何か――三澤氏がいくつか挙げたポイントは「エンタープライズレベル」に集約できる。

例えば、信頼性。Exadata、ビックデータなどのサービスをクラウド上で提供するため、顧客は本番環境を動かすことができるという。「われわれのPaaSは強力でエンタープライズで使えるレベルにある」とした後、競合のAmazon Web Services(AWS)を指して、「残念ながらAWSは突然停止することがある。止まるという前提で設定しなければならないので、エンタープライズは使えない」と比較して見せた。

それ以上に重要なポイントとするのが、「オンプレミスで使っているのと同じ製品が使える」という点だ。「オンプレで作ったものをクラウドに挙げる。そして、重要なことにクラウドで使ったものをオンプレに戻すことができる」とし、これもオラクルだけだとした。

マツダ ITソリューション本部 インフラシステム部長 松岡正樹氏

PaaSの顧客としては、2012年に敷いた構造改革プランを進めている自動車のマツダが紹介された。同社のITソリューション本部 インフラシステム部長 松岡正樹氏は、IT側の取り組みを語った。同社は「Oracle E-Business Suite」などを利用して次世代IT基盤を構築してきたが、PaaSを実験的に利用しているという。「開発環境、テスト環境など、将来安定的に使う領域ではないものは、クラウドを使っていくのが現実的ではないか」と松岡氏。

松岡氏はクラウド移行にあたっての課題として、「マインド」「セキュリティ」の2つを挙げた。マインドとは、これまでの自社固有のシステムという考え方から「サービスとして共通のものを使う」という方向にマインドを変える必要があるという。自身の専門分野であるというシミュレーションの世界で30年前にパッケージが登場した当初、「"こんな機能がないからだめ""パッケージなんてありえない"という声があったが、スピードには勝てない」と振り返りながら、同じことがITとビジネスの世界に起きているのでは、とした。

クラウドに対するマインドの問題はKDDIの山崎氏も触れた。クラウドに対しては現在、"アレルギー" あるいは"クラウドありき"の両極の状態が見られるが、「どのソリューションが生産性が高いのかを単純に比較するということを丁寧にやる。それなしの"クラウドありき"だと、疑問が出てくる」と選択のスタンスを語った。

両者が挙げたのは、クラウドで得られるスピードメリットだ。マツダの松岡氏は「朝に設定したら昼には使えるというスピード感で、時間をお金で買っているという感覚」「スピード勝負の時代。(クラウドなどの)技術を活用することを考えないと勝てないのでは」と述べ、KDDIの山崎氏も「一からプロセスを作り上げて立ち上げる場合と比べると、簡単で楽」とし、「海外でも日本でも同じものを使っていく環境を整えることが大切ではないか」と語った。