筆者にとって、非常に多くのメリットを享受しているiPhoneの大型化だったが、スマートフォン市場を眺めてみれば、Appleが影響力を保ち続ける上で、必要なことだった、と振り返ることができる。

Androidスマートフォンも同時に利用してきたが、iPhone 5sをリリースした2013年ごろに、米国でSIMフリーで100ドル程度のプライスタグがついていたエントリーモデルのAndroidスマートフォン、例えばモトローラの「Moto G(初代)」は、すでにその画面サイズにして4.5インチ、解像度も1280×720ピクセルの720p、いわゆるHD解像度を実現していた。

もちろん、ディスプレイの質はサイズと画素数だけでは決まらないことは前提としても、価格が1/6以下で性能も問題ないレベルのスマートフォンですら、4インチのiPhoneを上回る性能のディスプレイを搭載していたのだ。当時、高画質大画面を推し進めていたサムスンのGALAXYシリーズは、iPhoneのライバルとしての存在感を十分に発揮していた。このことからも、iPhoneも大画面化なしには、競争力を維持できない状況だった。

先進国市場において、iPhoneの画面拡大は、シェアを失わないための施策だったというべきだ。

iPhoneの年間販売数を振り返ると、iPhoneが急激にシェアを拡大しているのは、iPhoneを販売する市場が拡大した時に限られてきたからだ。iPhoneが年間で5,000万台以上の販売増を達成したのは2011年9月末からの1年間と、2014年9月からの1年間の2回だけ。2011年に発売したのはiPhone 4Sで、米国市場において、最大手の携帯電話会社Verizon WirelessがiPhoneの販売を始めたタイミングだった。そして、2014年にインパクトを与えたのは、中国市場での販売強化であった。

画面拡大と競争力については先進国市場でも同じことが言えるできるが、Appleが狙っていたのは中国市場にも重要な要素だった。中国市場は、前述のサムスンがハイエンドスマートフォンを、その他の中国メーカーがミドルレンジ以下のスマートフォン市場を支配していたのである。Appleが目をつけたのはサムスンの支配領域であり、やはりここでも、大画面高品質のスマートフォンを送り出さなければ、市場を取れなかったはずだ。