コムエキスポジアム(Comexposium Japan)は、12月1日と2日の2日間、東京国際フォーラムにおいて「ad:tech tokyo 2015」を開催。2日の午前中には、英TrendWatching Managing Director ヘンリー・メイソン氏が、「"結果を出せ、さも無ければ去れ" 2016年とそれ以降の消費トレンドを読み解く」という刺激的なタイトルで講演を行った。

講演を行う英TrendWatching Managing Directorヘンリー・メイソン氏

同氏は講演の冒頭、3つのイノベーション例を示し、このアイデアが好きか、嫌いかを会場の人に挙手によるアンケート調査を行った。

判断を仰いだのは、ウクライナの旅行代理店が実施しているメッセージサービスで、顧客とチャットのようにやり取りを行うサービス、Mr.Babeというポッチャリメンズ向けのムック、米国のケンタッキーフライドチキンのイノベーションで、Bluetoothでスマートフォンと接続できるキーボートが印刷されたペーパートレイで、手を汚さすスマートフォンを操作できるというイノベーションの3つ。

好きか、嫌いか聞いた3つのイノベーション例

アンケート結果では、いずれも好きという人が多かったが、嫌いという人も少数派ながらいた。

この結果を受け、ヘンリー氏は、「あなたが嫌いだからといって、他の人が嫌いだとは限らない。まず、自分をはずして、お客様が使うか使わないかを考えることが重要だ」と指摘した。

ヘンリー氏はTrendWatchingで各国のトレンドを分析しているが、同氏はトレンドについて、「トレンドといえば、来年の流行の色は何か、日本経済が上向きなのか、何がカッコいいのか、何が人気なのか、何が流行りの言葉なのか、ということを考えがちだ。確かにこれらも重要だが、私たちがいうトレンドは『消費者トレンド』で、基本的な人間のニーズ、要求に対する新たな行動や姿勢、期待が多くの人々の間で兆候として現れることと定義している」と説明した。

人間の本質や根本的なニーズは変わらない

では、どうやってトレンドを発見するのか?

これについて同氏は、「まず、しなければならないのは、顧客が新たなサービスや製品の何にワクワク感を感じるのかを見るということが重要だ。トレンドは革新的なイノベーターが人々ニーズを新しい形で言及することによって生まれてくる」と指摘。ただ、人間の本質は何も変わっていないことは、認識しておく必要があるという。

「世界は日々刻々と変わっているが、人間の本質や根本的なニーズは変わらない。たとえば、YouTubeで一番人気の動画は、『どうやってキスをするか』というものだ。モバイルはすべてのものを変えたが、電車の中の通勤スタイルは何も変わっていない。電車の中でエンターテインメント情報がほしいというのは、デバイスが変わっても同じだ。人間のニーズは変わっていない。毎日新たなイノベーションが生まれているが、これが何を創り出しているのかといえば『期待』だ。トレントウォッチというのはそういうことだ」(ヘンリー・メイソン氏)

人間の本質は変わらないとヘンリー・メイソン氏

モバイルデバイスが登場しても通勤風景は変わらない

そして同氏は新たな製品やサービスを開発する場合、「人間の基本的なニーズ」、「変化をドライブするもの」、「イノベーション」の3つを満たす必要があると説明し、次のように続けた。

「それが新しく変化を起こせるものだとしても、人間の本質的なニーズを満たしていなければ、それは単なる『新しいもの』に過ぎない。よく役員から自社の競合はどこなのかと聞かれることがあるかもしれないが、この質問はあまり意味がない、お客様に業界は関係なく、求めているのは最高レベルのサービスや製品を得られることだ」(ヘンリー・メイソン氏)

「人間の基本的なニーズ」、「変化をドライブするもの」、「イノベーション」の3つを満たす必要がある

POST-DEMOGRAPHICが必要

そして、同氏はこれまでのように顧客を年齢、性別、場所、年収などをで分類するのことは意味がないと指摘した。

「顧客セグメントの古いモデル(DEMOGRAPHIC)はもう意味をなさない。現実の世界を反映するものではない。これが1つの大きなトレンドだ。消費パターンというは、いままでのように年齢や場所、所得などでセグメントできない。なぜなら、人々のライフサイクルやアイデンティティは流動的でフレキシブルになっているからだ。たとえば、ユニクロは万人のための服を作っており、性別や年収は関係ないといっている。アップルのiOSを搭載した製品では、CEOと社員が同じスマートフォンを使っている。ニューヨークのプログラミング教室では75%が女性だ。若者がプログラミングを学ぶという時代は過ぎた。イギリスのアンケートでは69歳と13歳の人が同じ音楽が好きと答えている。これまでは、音楽は世代を分けて考えていたし、親と同じ音楽を聴くことは考えられなかった。しかし、今ではおじいさんと孫娘が同じKPOPのコンサートに行くことが当たり前になっている」(ヘンリー・メイソン氏)

では、どうやって消費者を捉えればいいのか? これについて同氏は、次のように説明し、講演を締めくくった。

「高齢者や女性などと消費者を見るのではなく、個人で見る必要がある。テクノロジーの台頭でそれができるようになった。かつては、対象の年齢と性別がわかれば完璧なプログラムができたが、これは今では役に立たないデータだ。場所、年齢、性別などの型にはめてその人の消費パターンを予測することはもはやできない。われわれの目の前には莫大な情報があり、その人のためだけのリストを送ることができる。個人の好みに合わせていく、これこそがPOST-DEMOGRAPHICの戦略だ」(ヘンリー・メイソン氏)

POST-DEMOGRAPHICが必要