アユートは10月24日、東京・中野サンプラザで開催されている秋のヘッドフォン祭 2015にて、英Chord ElectronicsのUSB DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ「Mojo」を一般公開。記者向けの説明会も開催した。Mojoは11月14日発売で、価格はオープン。アユートによる直販価格は税込73,400円。

「Mojo」はiPhoneやAstell&KernのAKシリーズとのマッチングが良好なポータブルアンプ

Mojoを開発したChord Electronics(以下、Chord)は、現CEOであるJohn Franks氏が1989年に英国で設立した技術集団企業。その社名は、ギターやピアノで奏でる"コード"に由来し、DAC設計まで独自に行える技術力を強みとしている。

ChordのCEO John Franks氏が来日。「日本の熱いオーディオファンを見ていると、気分がアガる」という日本好き

Mojoは、"真のDACデザイナー"と呼ばれるエンジニア、Rob Watts氏のプログラミングによって、Xilinx社のAtrix7に複雑な独自のアルゴリズムを吹き込んだことが最大の特徴。PCM 768kHz/32bit、DSD 11.2MHzまでの音源入力を自動的に識別し、ネイティブ再生することが可能となっている。

Atrix7は、エンジニアがその働きをプログラミングできるFPGA (Filled Programmable Gate Array)という種類の半導体チップ。Mojoの開発にあたってChordの開発陣は、「DACやFPGAは絵画でいうフレーム(枠)にすぎず、そこに貼るキャンバスにどんな絵を描くかが重要だ」との考えをもって挑んだという。つまり、理想の音質を実現するために、DAC設計もできる技術力を最大に活かせるのがFPGAであったという訳だ。

FPGAであるAtrix7を用いた独自のDAC設計

コンパクトなデザインは、Astell&KernのAKシリーズと良好にマッチング。iPhoneともカメラコネクションキットを介しての接続が可能となっている。一方、Android端末については機種によって素直にOTG接続できない場合もあるようだが、オンキヨーのHF Playerのようにアプリ内にドライバーを持つプレイやー使うことで、それを回避できるそうだ。また、ソニーのウォークマンもWM-Portケーブルで接続して利用できる。

ヘッドホンのインピーダンスは4Ωから800Ωまでサポート。バッテリー駆動時間は8時間。2人で同時に音楽を楽しめるよう、3.5mm端子を2基備えているのもユニークだ。電源ボタンとボリュームにはLEDが仕込まれ、入力ソースの周波数や音量の大きさによって色が変わる。きょう体の素材は航空機グレードのアルミ製で"Tank Proof"、すなわち戦車に踏まれても壊れないほどの堅牢性を誇るという。

アユートのブースでは、Mojoを試聴することが可能

ボリュームや入力音源の違いによって、LEDの色が変わる

説明会に登壇したオーディオライター、佐々木喜洋氏によると、Mojoの音質は「優れた透明感と解像力、楽器表現の正確性が特徴。モニター的ではなく、ダイナミックでパンチの効いた"音楽的な側面"がある。アコースティック、クラシックだけでなくロックもいける」とのことだ。

今回のイベントに合わせて来日したFranks氏は説明会で、「ハイエンドオーディオで培った技術を、新しい世界(ポータブル)に向けて表現していきたい」と語り、3年の開発期間を要したことや、8月に出荷されたばかりのAtrix7を採用したことに触れつつ、今後のアクセサリー製品の投入計画についても明かした。

11月ごろにリリース予定のiPhoneをワンタッチで装着できるモジュールを皮切りに、DLNAによってネットワークプレーヤ化できるWi-Fiモジュール、プレーヤー機能も併せ持つSDカードモジュール(それはプレーヤーではないのか?)を3カ月おきくらいのペースで順次リリースしていく見込みだ。

搭載しているインタフェース類。2人で同時に聴けるのがユニーク