DMM.comは、同社が支援する紀里谷和明監督のハリウッド進出最新作『ラスト・ナイツ』に関して、同社会長の亀山敬司氏と紀里谷監督が日本映画の現状を語る対談「日本の現状では世界規模のコンテンツは作れない!」の模様を公開した。

紀里谷和明監督

日本での公開が「DMM.com PRESENTS」となった理由

DMM.comが『ラスト・ナイツ』で映画に参入したのは、同社の亀山会長に紀里谷監督が「もっと制作費をかけて、世界で勝負できるようなコンテンツを作りたい」と直訴したことがきっかけ。亀山会長のもとには以前から映画への投資話が何件も舞い込んでいたが、「日本市場だけで採算を取るのは難しい」と断っていたが、紀里谷監督の「日本人俳優は出演させるが、さまざまな国籍の人を入れた上で、世界に通用する本格的なコンテンツにしたい」という話に興味を抱いたという。

亀山会長は、「(それまでに来ていた映画への投資話は)日本の中で興業を成功させればいいと考えている人が多かったし、同じような構想を抱いていても実際に作る人はいなかった」ものの、「彼は既に色んな段取りを付けていて、あとは資金繰りのことだけだった」ことから、協力を決意したということだ。

そして、配給に関して、『ラスト・ナイツ』は世界30カ国で売れたにも関わらず、日本の企業からは買われなかったことを明かした。そこで、自分たちで配給を行うべく「DMM.com PRESENTS」という形をとった。

『ラスト・ナイツ』の脚本は、アメリカ人シナリオライターが「忠臣蔵」を題材として書いているという。これについて亀山会長は「今の日本の漫画や小説にも素晴らしい原作が多く存在するが、それらの映画の制作権はハリウッドに買い取られている」と言及すると、紀里谷監督は「『AKIRA(アキラ)』など日本の多くのコンテンツがハリウッドに買われているが、買い取った企業の幹部は自社がそのコンテンツを持っていることすら知らず、結局作られたのは『ドラゴンボール』だけなんです」と残念がった。

さらに「日本には優秀な制作ノウハウがあるので、日本のスタッフと世界のスタッフでどこかの国に行って撮影すれば、今のハリウッド映画の何分の一かの予算で作れるんですよ」と断言。今回の映画では、スタッフを世界中から集め、日本人は紀里谷監督と伊原剛志氏のふたりだけ、ロケ地はチェコとのことだ。

「紀里谷作品に惚れ込んでいない」亀山会長が投資したワケ

亀山会長は「私が特に知りたかったのが流通で、例えば日本の配給で5億売上がるとき、アメリカやヨーロッパではいくらになるか、利益はどうかといった数字はやってみないと分からないため、彼の経験の中で理解して行く。それが分かれば、次回作の収支が見込める」とし、「紀里谷監督の作品に惚れこんで出資した」というわけではなかったこと明かした。同氏は個人的には岩井俊二作品が好きだというが「あのような繊細な描写は韓国・中国では人気あっても、アメリカで理解されるかは疑問だ」とし、「今回の出資によって数字的な部分が見えてくれば、例えば『進撃の巨人』や『ジョジョ』、『デビルマン』、『銀英伝』などの海外実写版を作っていくこともあり得る」と将来の展望も述べた。

紀里谷監督は、「中国の映画界が巨額の制作費で世界中からスタッフを集めている。日本でやるべきことを中国がやっている」と述べるとともに「アメリカではNetflix、Hulu、Amazon等が既存のコンテンツ配信だけでなくオリジナルのコンテンツを作り始めている。これが成功すれば映画会社を越える可能性があり、世界中で劇場配給なしで配信が始まることになる」と語った。

亀山会長は「自分は商売人なのでクリエイティブには関わらず、中国人キャストを入れて中国市場を狙うとか、映画の配給にこだわらずNetflixに売り込むとか、そういった儲かるビジネスの構造を作ることで、結果的にクリエイターが活躍できる仕組みを作りたいと考えている」とコメント。さらに、今回の映画参入が実験的な試みだと明かした上で、「どうせやるなら中国市場を取りたい」と意気込みを語った。