ダイキン工業は、9月16日に発売されたコンパクトな加湿空気清浄機「加湿ストリーマ空気清浄機 MCK55S」の説明会を開催した。新型の加湿ストリーマ空気清浄機は、従来の形状とは異なるスリムタワー型を採用し、設置面積が小さくなっているのが特徴だ。説明会では、構造のちがいや大きさ、運転音など、旧モデル「MCK55R」との比較が行われた。

「加湿ストリーマ空気清浄機 MCK55S」。カラーはホワイト、ディープブラウン、ブライトオレンジ、ミッドナイトブルーの4色から選べる

加湿機能付き空気清浄機の需要は増加傾向

ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室 住宅用事業担当課長 谷内邦治氏による説明が行われた

はじめに、ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室 住宅用事業担当課長 谷内邦治氏が、市場動向や製品開発の経緯について説明した。

ダイキン工業は2008年に加湿機能付きの空気清浄機を初めて発売し、2009年には加湿空気清浄機の需要を大きく伸ばした。その後、花粉の大飛散やPM2.5が話題になり、2012年度は空気清浄機が300万台に迫る爆発的な売れ行きを記録。2013年以降、空気清浄機市場は縮小傾向にあったが、加湿機能を持たない空気清浄機から加湿空気清浄機への買い替えや買い増し需要は拡大傾向にある。

特に求められているのは、リビングなどの広い空間向けより、寝室や子供部屋で使用するコンパクトな加湿空気清浄機だ。小さな空間で使用する際のニーズに応えるべく、省スペースでも置けるようなコンパクトな加湿空気清浄機を開発するに至った。

【左】住宅用空気清浄機市場の動向。買い増し需要が旺盛になってきているという。買い替えサイクルは約6年といわれているため、買い替え需要の期待も大きくなる。【中】ユーザーは「しっかり集じんすること」を求めている一方で、「大きい」「うるさい」との不満を抱えている。しかし一般的に、空気清浄の性能と音・大きさは反比例する。そこで設計をゼロから見直した。【右】性能を維持しつつ、コンパクト・静音化に挑戦。部品をすべて変えたのでコストがかかっている

【左】加湿ストリーマ空気清浄機の特徴は主に4つ。【右】従来の加湿空気清浄機とは、部品の配列がまったくちがう

スリム化することで、部品もゼロから作り直し

実機を使って新旧モデルのちがいを説明する谷内氏

空気清浄機に対する1番のニーズは「しっかり集じんする」という基本性能だ。ただ、基本性能を追求すると本体が大型化し、コンパクトにしようとすると運転音が大きくなるといった、相反する技術的課題も。難しいながらも、MCK55Sでは旧モデルの集じん性能を維持しながら、コンパクト・静音の実現を目指した。特に6畳、8畳、10畳といった比較的狭い部屋に設置するには、設置スペースを小さくすることが求められるため、部品から構造に至るまで、ゼロから見直している。

大きく変わったのは、部品の配列。旧モデルのMCK55Rは、前から奥に向かって部品を横に配列している。ダイキン工業に限らず他のメーカーも同じような構造を採用しており、スタンダードともいえる方式だ。しかし、この方式では、性能を維持しながら静音を実現しようとすると、本体が大型化するという欠点がある。そこで、改めて構造を見直し、MCK55Sは下から上に部品を積み上げる縦方向の方式を採用した。下から送風ファン、集じんフィルター、脱臭フィルター、加湿ユニットの順で、上部に手入れが必要な部品を集約している。

【左】すっきりとしたスリムなタワー型。本体サイズは幅270×奥行き270×高さ700mmで、重量は約9.5kg。【中】幅と奥行きは同じサイズ。【右】上から見ると正方形となっており、ここが吹き出し口。吹き出し口の最大風量は毎分5.5立方m

その結果、旧モデルと比べると容積は約85%となり、設置面積も30%縮小、人が感じる運転音(SONE)は30%低減している。旧モデルのMCK55Sは幅が374mm、奥行きが280mmだったが、MCK55Sは幅と奥行きともに270mm。底面が正方形のすっきりしたタワー型に生まれ変わった。

スリムになっても従来通りの高い空気清浄性能を維持している。独自の除菌・脱臭技術「ストリーマ」と、イオンの力で部屋に染み付いたニオイや菌を除去する技術「アクティブプラズマイオン」のダブル方式を採用しており、0.1~2.5μmの粒子を99%除去できる。

左が新モデルのMCK55S、右が旧モデルのMCK55R。並べてみるとMCK55Sのほうが細く背が高い

【左】ターボモード(最強)で運転音の聞き比べも行われた。旧モデルでは「ゴーッ」という低い音が気になったが、新モデルはその低い音を感じることがなく、とても静かだと感じた。【右】フィルターは従来モデルの2/3の大きさだが、同じ風量を確保。その理由は、最下部にあるファンとフィルターの距離を離したことによって均一な風を送れるようになったから。旧モデルではファンとフィルターの距離が近く、フィルターの一部にしか風が当たっていなかった

さらに、吸い込み口と吹き出し口の距離が離れたことにより、吸い込みの風と吹き出しの風がぶつかってはね返ることがなく、効率よく吸引できるようになった。吸い込み領域も約20%アップし、より広い範囲のホコリを吸引できるようになったという。

手入れのしやすさも大幅に改善

定期的な掃除が必要なプレフィルターを本体側面に配置したことで、フィルターを取り外すことなく、付着したホコリを直接掃除機で吸い取れるようになっている。ユーザーは掃除機の吸込口をMCK55Sの本体側面に当てるだけと、掃除の負担は軽減した。

加湿用の給水タンクを本体上部に配置することで、ラクな姿勢で取り出せるようになった。しゃがむ必要がなく、立ったまま取り出せる。また、給水タンクの背の高さが旧モデルより110mm低い190mmになったことで、浅い洗面台でも給水しやすくなった。背が低くなったことで奥まで手が届きやすく、洗いやすいというメリットもある。さらに、有害物質を酸化分解するストリーマユニットは、これまで定期的なメンテナンスが必要だったが、放電部の構造を見直すことで、メンテナンス不要になった。

【左】左が新モデルのMCK55S。給水タンクは背が低くなり、給水しやすくなった。【右】加湿ファンも取り外しやすくなった。旧モデルMCK55Rに比べて小さくなっているが、1時間あたりの加湿能力は500mlと変わらない。加湿機能を併用する場合の適用床面積は約14畳だ

【左】給水タンクは中に手を入れて洗える。【右】吸込みグリルとプレフィルターを一体化しているため、フィルターを外さないで、外から掃除機で吸い取ればOK

子どもがいても安心して使える細かい配慮

小さな子どもがいる家庭では、いろいろなアクシデントを想定しておかなければならない。予想外のいたずらをする場合があるからだ。

空気清浄機で多いのは、子どもが送風口にモノを入れてしまうこと。異物落下を防止するネットがあるものの、鉛筆などが入ってしまったときは、外に出せない場合がある。爪楊枝のような細長いモノは、簡単にネットを通って入ってしまい、送風口近くにある高速回転する送風ファンに当たって故障することも。

MCK55Sなら上から何か異物が入ったとしても、そこにあるのは高速回転するファンではなく、ゆっくりと回る加湿ファンなので、ぶつかったとしても危険性はない。すぐに異物を取り除くことができる、今までにない構造だ。これは、子供がいる家庭にとってはうれしい改善と言えるだろう。

【左】旧タイプの吹き出し口は中を確認しづらく、異物が入ると取り出せない。また、入り込んでしまった異物が送風ファンにぶつかってしまうと危険。【右】MCK55Sは一番上のファンがゆっくり回転する加湿ファンのため、ぶつかっても大丈夫。異物も取り除ける構造になっている

重いモーターやファンを下に配置することにより、重心をできるだけ下げているため、子どもがぶつかってしまっても、倒れにくい。もし心配であれば、安定性を高める「置台」も別売で用意されている。小さな子どもがいる家庭なら、こういったオプションを利用するとさらに安心して使えそうだ。

こういったオプションまで用意されているのはうれしい